研究課題/領域番号 |
23591537
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
嶋田 明 岡山大学, 大学病院, 講師 (70391836)
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研究分担者 |
林 泰秀 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (30238133)
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キーワード | AML / チロシンキナーゼ / 薬剤耐性 / FLT3 / 骨髄微小環境 / JAK阻害剤 / 抗メチル化薬 |
研究概要 |
急性骨髄性白血病(AML)のTKI耐性メカニズムを調べるため、慢性骨髄性白血病(CML)や骨髄増殖性疾患(MPN)についても検討を行った。 1)AML細胞株のMV4-11,THP1, U937を使って、TKIとPI3K/mTOR/AKT阻害剤との組み合わせにシナジー効果があることをMTTアッセイとapoptosisの系で見出した。これはPI3K/mTPORのdual inhibitorであるPI103やBEZ235でより顕著で、MSCとの共培養系でもシナジー効果がみられた。 2)CML細胞株K562とAML細胞株MV4-11でTKIとJAK/STAT阻害剤のシナジー効果を確認した。K562ではImatinib, Dasatnib, NilotinibともにJAK/STAT阻害剤であるCuIとシナジー効果を示し、MV4-11ではSorafenib, Sunitinib, PKC412ともにCuIとシナジー効果を示した。 3)AML, CML細胞株でTKIを3ヶ月添加し濃度依存的にTKI耐性株を作成したが、FLT3やABLに新たな変異はみられなかったが、NRASのcodon12の変異を新たに獲得した。また経過中巨細胞が出現し、mitotic catastropheを起こしている可能性が示唆された。 AMLではFLT3以外の他のシグナルPI3K/mTOR/AKT、JAK/STAT系、MAPK系への依存度も高いと考えたため、その他のシグナルの同時抑制が重要と考えた。またCMLでImatinibを長期に使用した患者さんの中で骨髄異形成症候群 (MDS)様病態を呈したり、染色体異常がみられる症例もあり、TKIによるmitotic catastropheがその一因となっているものと考えられた。 4)小児のMPNにおいてもJAKV617F変異が一定割合でみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LSCの同定はフローサイトによるCD34+CD38-細胞、Side Population細胞(SP細胞)、aldefluor法による同定を数例でおこなったが、必ずしも同一な細胞集団を示していなかった。また細胞集団が非常に少なく、同定に困難を来している。SP細胞の増幅に関しても、MSCとの共培養系に低酸素条件や、三次元培養など組み合わせているが、SP細胞の著しい増加はみられていない。このため。コロニーアッセイでの系に変更し、またTKIとシナジー効果を示す薬剤の探索を精力的に進めた。
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今後の研究の推進方策 |
MSC細胞株を用いた白血病細胞との長期共培養系の確立を目指すが、本方法が難しい場合は、白血病細胞によるコロニーアッセイを行い、コロニーに対してTKI, PI3K阻害剤、JAK阻害剤、抗メチル化薬などの増殖抑制効果を検討する予定である。今後PI3Kδ特異的阻害薬であるIC486068やIC87114は毒性が少ないことから、シナジー効果の確認を行う。またJAK阻害剤であるTofatinibが臨床応用可能となっており、今後Tofatinibとのシナジー効果の確認を行う。あわせてTKIによるmitotic catastropheのメカニズムの研究や、抗メチル化薬についても検討を行う。またMPNにおけるJAK阻害剤についても検討する予定である。次年度使用額(B-A)91,416円が生じた理由については、当初購入を予定して、本年度使用予定の物品があったが、購入しなかったためで、次年度に購入予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費はほとんど消耗品の購入に充てられ、設備備品の購入の予定はない。消耗品としては、チロシンキナーゼ阻害剤、PI3K/mTOR阻害剤、JAK阻害剤、抗メチル化薬、DNA、RNA抽出キット、PCR試薬,シークエンス用試薬、パイロシークエンス用試薬、細胞培養メディウム、フローサイト用抗体、リン酸化タンパク解析キットなどの消耗品を購入予定である。
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