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2012 年度 実施状況報告書

小児急性リンパ性白血病の微小残存病変を用いた白血病幹細胞特性解析の試み

研究課題

研究課題/領域番号 23591539
研究機関三重大学

研究代表者

出口 隆生  三重大学, 医学部附属病院, 講師 (70345990)

キーワード小児血液学 / 白血病 / アポトーシス / 微小残存病変 / microRNA
研究概要

白血病の重要な治療薬剤であるグルココルチコイドのひとつであるデキサメサゾン(DEX)で細胞死が誘発される急性リンパ性白血病細胞株を選び、通常の細胞死誘発濃度1x10-7μmol/Lを上回る1x10-6μmol/Lの濃度でも細胞死が誘発されないDEX耐性細胞株を4株誘導した。親株および耐性細胞株から各々タンパク質やmRNAを抽出し、Bimやカスパーゼなどの細胞死関連蛋白の発現を調べて比較した。親株ではDEXの投与によりBimのmRNAやタンパクの発現が誘導されたが、耐性株では発現は誘導されず、Bimの遺伝子発現調節以前の段階で耐性化が生じていると考えられた。耐性化細胞をDEX抜きで培養を継続したところ、可逆的な性質を示したものは1株に過ぎず、残る3株は半年あまり培養を行っても再び細胞死を誘導できるようにはならなかった。
まず、親株・耐性細胞株におけるBim遺伝子プロモーター領域にはDNAメチル化を生じていなかった。DNAメチル化阻害剤5-AZAやヒストン脱アセチル化阻害剤(HDACI)SAHA等を添加して効果を調べたところ、後者で一定の効果を認めたためヒストン脱アセチル化の関与は否定できなかった。現在DEXとの併用効果を更に検討中である。
遺伝子プロモーターのメチル化以外の遺伝子発現調節機構として近年注目されるmicroRNAについて調べたところ、Bimの遺伝子発現に関連すると考えられているmiR-17-5p, 18a, 19a, 19b, 20a, 92aすべてが上昇していた。親株に対してmicroRNA agonisticなmimicを、耐性株にはinhibitoryなoligoを導入したが、有意な結果は得られなかった。
微小残存病変の検出は安定して実施できるようになった。ソーティングに適用出来る細胞数・タイミングを有するサンプルを現在待っている状態である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

白血病細胞株からステロイド耐性細胞株を4株樹立した。Bimなどアポトーシス関連タンパク質遺伝子のDNAメチル化を調べたが、いずれの細胞株もメチル化はされていなかった。同様にエピゲノム調節を行うヒストン脱アセチル化については阻害剤を用いて実験を進めているが、現在のところ明確な結果は得られていない。
耐性株において、近年エピゲノム調節を行う重要な分子として注目されているmicroRNAについても調べたところ、多くのmicroRNAの発現が亢進していることが明らかとなった。耐性化誘導を行った細胞について、アポトーシス関連遺伝子との関係が示唆されているmiR-17-5p, 18a, 19a, 19b, 20a, 92a、およびグルココルチコイド受容体の発現との関係が示唆されているmiR142-3pはすべて発現が著明に亢進していたため、各々のmicroRNAについてagonisticな、あるいはantagonisticな作用を示す各々mimic、inhibitorを導入して細胞死誘導への影響を調べた。現在までの所、感受性株へのmimic導入によって細胞死誘導の増加は示すことが出来なかった。また耐性株へのinhibotor投与で感受性の回復はできなかった。いくつかの細胞株で導入効率の改善も必要と考えられた。
新鮮検体を用いた検討では、マルチカラー染色を用いたMRDの検出は安定して実施可能であるが、実際にソーティングをタイミング良く実施できる症例の確保に苦慮している。また分離された細胞を用いた解析の準備面では、レーザー共焦点顕微鏡を用いてBimや細胞死関連タンパクの局在の検討は細胞株においては安定的に実施できる体制が整いつつある。

今後の研究の推進方策

ステロイド感受性株と耐性株におけるタンパク発現を、Bimやカスパーゼなどのアポトーシス関連蛋白の他、グルココルチコイド受容体についても検討する。HDACIやメチル化阻害剤などとDEXを併用し、細胞死誘導へ与える効果について検討する。
引き続きセルソーターFACS Ariaを用いた新鮮細胞からのMRD(微小残存病変)分離の条件最適化を試みる。寛解期骨髄と発症時白血病細胞を混合することでMRDのモデルサンプルを作成し、実験条件を最適化した上で、治療開始後の細胞の分離を試みる。発症時の細胞とMRD細胞の各々からmRNA分離を試み、Bim遺伝子やグルココルチコイド受容体、microRNAの発現について比較する。可能であれば、ステロイド添加6~8時間後のmRNAについても比較検討する。
初発時白血病細胞と、MRD細胞から分離されたmRNA(microRNAを含む)を元に作成されたcDNAで他の細胞死関連タンパクやmicroRNAの発現を網羅的に解析するために、可能であれば共同研究先を確保して、遺伝子発現プロファイリングを行う。

次年度の研究費の使用計画

(消耗品費)細胞培養用試薬・血清・培養用フラスコ等消耗品など:23万円、フローサイトメーター試薬・抗体:35万円、RNA分離精製キット・cDNA作成用キット・トランスフェクションキット:25万円、ウエスタンブロット試薬・抗体:27万円、以上、計110万円
(旅費)成果発表のための学会(小児血液・がん学会など)参加旅費:5万円
(その他)成果発表のための投稿・印刷費:5万円

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] TAM芽球におけるCD117発現と末梢血中芽球割合の相関

    • 著者名/発表者名
      出口隆生、村松秀城、林 泰秀、菊池 陽、駒田美弘
    • 学会等名
      第54回小児血液・がん学会学術総会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市
  • [図書] 小児造血器腫瘍の診断の手引き 5.フローサイトメトリーによるMRD測定2012

    • 著者名/発表者名
      出口隆生
    • 総ページ数
      53-59
    • 出版者
      日本医学館社

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公開日: 2014-07-24  

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