研究課題/領域番号 |
23591540
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 範行 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00322719)
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研究分担者 |
早川 晶 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40379376)
西尾 久英 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80189258)
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キーワード | 神経芽腫 / がん幹細胞 / 微小残存病変 / Rab |
研究概要 |
神経芽腫は、神経堤細胞が交感神経系へ分化する過程で発生する代表的な小児難治性固形がんで、小児がん死亡の約1/6を占めている。特に、半数以上が再発する高リスク群患者の長期生存率は未だ40%に達していない。その予後改善には、再発の起源と考えられる神経芽腫がん幹細胞の発生・分化機構の理解が不可欠である。神経芽腫がん幹細胞の正確な起源は未だ明らかになっていないが、ホルモンや神経伝達物質の分泌を司り、接着分子/軸索ガイダンス分子の移動や膜成分の再配置を制御する細胞内小胞輸送が、神経芽腫がん幹細胞の発生・分化に必須の役割を果たすと考えられる。そこで申請者らは、細胞内小胞輸送の中心的な制御因子であるRabファミリー低分子量G蛋白質(Rab)の神経芽腫がん幹細胞の発生・分化における機能解明を試みている。本年度の研究では、神経芽腫がん幹細胞において発現量の変化するRabを検索し、4つのRabメンバーを同定した。それらのRabメンバーを過剰発現およびノックダウンした神経芽腫細胞株を樹立し、Rabの発現量とスフェアー形成、コロニー形成、および免疫不全マウスに移植した際の腫瘍形成が相関するメンバーを同定することに成功した。さらに、同定したRabの機能解析のため、神経芽腫患者の臨床検体におけるがん幹細胞の割合を評価することを試みている。神経芽腫がん幹細胞は、臨床的には微小残存病変(MRD)として捉えられると考えられており、これまでに数多くのMRD測定法が報告されてきた。しかし、異なった施設から異なった方法が提唱され、臨床的に使用可能な方法は未だ確立されていない。そこで、本年度の研究では、神経芽腫患者の骨髄、末梢血および末梢血幹細胞検体におけるMRD量を定量する測定法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経芽腫がん幹細胞の発生・分化に関わるRabの同定を目指して、がん幹細胞において発現量の変化するRabを検索した。スフェアー形成、コロニー形成、および免疫不全マウスに移植した際の腫瘍形成とRabの発現量が相関するメンバーを同定することができた。本年度の研究はおおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
神経芽腫がん幹細胞の発生・分化に関与するRabの機能解明を目指して、以下の実験を行っていく。 (1)神経芽腫がん幹細胞の発生・分化に関わるRabの機能解析: 過剰発現およびノックダウンした神経芽腫細胞に加えて、RabのGTP結合型変異体およびGDP結合型変異体を発現した神経芽腫細胞を樹立し、スフェアー形成、コロニー形成、および免疫不全マウスに移植した際の腫瘍形成を評価していく。さらに、DNA合成能、細胞増殖速度、細胞運動能に関しても解析を進める。 (2)同定したRabの標的蛋白質(複合体)の同定と機能解析: 同定したRabの神経芽腫がん幹細胞の発生・分化に関わる働きを担う標的蛋白質(複合体)をマススペクトロメトリーを用いて同定し、それらの機能解析を行っていく。 (3)同定したRabの上流/下流シグナルの同定と機能解析: 同定したRabを過剰発現した神経芽腫細胞とノックダウンした神経芽腫細胞における遺伝子発現をマイクロアレイによって解析し、同定したRabと共に発現変化する遺伝子(群)を候補として、上流/下流シグナルを同定していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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