研究課題/領域番号 |
23591541
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮村 能子 岡山大学, 大学病院, 助教 (20379796)
|
研究分担者 |
山下 信子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40379798)
鷲尾 佳奈 岡山大学, 大学病院, 助教 (10379802)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 移植・再生医療 / 間葉系幹細胞 / 細胞・組織 / 癌 |
研究概要 |
本研究では骨髄間葉系幹細胞Mesenchymal stem cell;hMSCの組織障害部位や腫瘍細胞などの異種抗原を認識し細胞浸潤する能力(組織ターゲッティング能力)、さらにTRAIL(TNF related apoptosis inducing ligand)の腫瘍選択的なアポトーシス誘導効果に着目し、TRAIL受容体が発現していることが知られている難治性小児急性リンパ性白血病(ALL)に対してTRAILのアポトーシス誘導能をhMSCをvehicleとして活用し腫瘍特異的に誘導することによって抗腫瘍効果の増強をはかり効果的な治療戦略の確立をめざすことを目的としている。本年度は、まず白血病細胞株(ALL株、乳児白血病株、薬剤耐性株)を培養し抗腫瘍剤との共培養を行い、その抗腫瘍効果をXTTassay、annexinVによるフローサイトメトリー(FCM)で確認した。この系が確立したので、hMSCを共培養し、その抗腫瘍効果に差があるかどうかを確認した。有意差はなかったがhMSCの添加によって抗腫瘍効果は増強する傾向がみられた。つぎにhMSCの濃度を変化させることでさらなる検討を行ったが、ある一定の濃度以降は濃度依存性に抗腫瘍効果が増強する傾向はなかった。さらにsTRAIL(可溶性)をMSCに導入し共培養し、抗腫瘍効果を検討しTRAILの組織特異的細胞障害能力の評価を行うことを計画した。しかしsTRAILの導入の安定した系が確立できず、この点は来年度以降の課題として検討を続けることとした。また、来年度は本課題に加え、今年度使用した抗腫瘍剤に加え分子標的薬の導入も検討する予定である。またこれらの結果をふまえてin vivoの系へすすむことを目標とする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞培養の系や共培養の系、さらに抗腫瘍効果を評価するXTTassay、FCMの系は確立された。しかし、hMSCの共培養を行うとによって抗腫瘍効果の増強がみられる傾向は示唆されたが、有意差は得られなかった。今後は例数を増やし検討していきたい。さらに本年度は当初の予定であったsTRAILをhMSCに導入し共培養する系の確立ができなかった。本研究のもっとも重要な課題のひとつがTRAILのアポトーシス誘導能がMSCをvehicleとして腫瘍特異的に得られるかどうかの検討であるためにこの系の確立は重要であり、来年度以降の検討課題とする。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降はin vitroの系での検討を行う。とくにsTRAILを導入されたhMSCと各難治性白血病細胞株を共培養し、その抗腫効果の評価を行うことは非常に重要である。この系が確立することによって、腫瘍特異的なsTRAILのアポトーシス効果がhMSCをvehicleにすることによってより効率的に誘導されることを検討することが可能になる。また、抗腫瘍剤は本年度使用したものにくわえ、チロシンキナーゼ阻害剤をはじめとした分子標的薬の使用も考慮する。これらの薬剤は今後白血病の治療にきわめて重要な役割を果たすことが多く報告されており、今後の治療の方向性を考えるに当たって重要な検討課題であると考える。また抗腫瘍剤の投与量の比率、hMSCの比率を増減してその効果を検討する。あわせて、これらの結果をふまえてひきつづきin vivoでの解析を行いたいと考え、ヌードマウスを使用する実験を計画している。難治性白血病細胞株由来の担癌マウスを作成し、同様に抗腫瘍剤ならびにチロシンキナーゼ阻害剤の投与を行いその抗腫瘍効果を検討したうえで、sTRAIL導入hMSCを共培養してin vitroの系と同様にその抗腫瘍効果について検討する。抗腫瘍効果の評価はXTT assayならびにannexinVを使用してFCMで検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
hMSC、白血病細胞株の培養方法や技術は初年度で確立された。しかし、予定していたsTRAILの導入の系の確立が課題として残ってしまった。繰越金を用いてsTRAILの導入を行うために必要な物品(ELISAキット、フローサイトメトリー試薬、制限酵素など)の購入を予定している。sTRAILを導入されたhMSCと各難治性白血病細胞株を共培養し、その抗腫効果の評価をXTT assayやannexinVを使用したFCMで同様に行うことを計画している。また次年度は上述したように抗腫瘍剤に加えチロシンキナーゼ阻害剤をはじめたした分子標的薬を投与し、それらの効果も同様に評価することを計画しているので、分子標的薬の購入を考えている。さらにin vitroの系での結果をふまえて、次年度ではin vivoでの解析を行いたいと考えている。ヌードマウスを使用して担癌マウスを作成することを計画しているために、マウスの購入費、維持費が必要となる。これらの担癌マウスにおける抗腫瘍効果は同様の系で評価するが、さらに病理学的な観点からの効果判定も行うことを計画しているため、特殊染色を行うための試薬も必要となる予定である。また関連学会における研究発表を行いたいと考えている。
|