研究課題/領域番号 |
23591541
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮村 能子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20379796)
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研究分担者 |
山下 信子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40379798)
鷲尾 佳奈 岡山大学, 大学病院, 助教 (10379802)
橋井 佳子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60343258)
難波 範行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10379076)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / TRAIL / 小児 / 急性白血病 |
研究概要 |
本研究では骨髄間葉系幹細胞Mesenchymal stem cell;hMSCにおける腫瘍細胞に対する異種抗原認識能力や細胞浸潤能力(組織ターゲッティング能力)、さらに腫瘍選択的アポトーシス誘導効果を有するTRAIL(TNF related apoptosis inducing ligand)に着目している。すなわち、TRAIL受容体が高発現している難治性小児急性リンパ性白血病(ALL)に対するTRAILのアポトーシス誘導能をhMSCをvehicleとして腫瘍特異的に誘導することによって抗腫瘍効果の増強を検討したいと考えており、より効果的な治療戦略の確立の一助となることを期待している。 今期乳児ALL細胞株においてTRAIL受容体(TRAIL-R1(DR4) R2(DR5))が低発現である傾向がみとめられたのでPh1陽性ALLならびに薬剤耐性ALL細胞株で確認を行いDR4,DR5が高発現である確認を行いこの2株を使用することとした。乳児ALL株においても検討しその差を確認する。 昨年に続いて上述した難治性ALL細胞株とhMSCを共培養し、さらに抗腫瘍剤や分子標的薬剤の添加を行い、annexinVによるフローサイトメトリー(FCM)で確認した。有意差はなかったがhMSCの添加によってアポトーシス効果は増強する傾向がみられた。つぎにhMSCの濃度を変化させてさらなる検討を行い濃度依存性に抗腫瘍効果が増強する傾向がみられた。ビスフォスフォネート製剤であるゾレドロン酸を使用し同様に抗腫瘍効果が増強する傾向がみとめられた。今後さらに検討を行う予定とする。本年度可溶性sTRAILをhMSCに導入し共培養し抗腫瘍効果を検討することでhMSCならびにTRAILのアポトーシス誘導効果の評価を計画したが、sTRAIL導入の安定した系が確立できず来年度以降の課題として検討を続けることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共培養の系や薬剤の投与量の検討、さらにTRAIL受容体の発現は確立され、アポトーシスの確認のためのannexinVによるフローサイトメトリー(FCM)法も確立された。MSC共培養の系で有意差はないが効果が得られている傾向があるが今後さらに件数を増やして検討したいと考えている。またsTRAILをhMSCに導入し共培養する系の確立をめざしたが安定した系の確立が難しく、再度実験系を確認し来年以降の重要な課題と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづきin vitroの系で検討を行う。現時点で確立されている難治性白血病細胞株と抗腫瘍剤の共培養の系にhMSCを添加することにより抗腫瘍効果の増強が得られる可能性があるので、さらに件数を増やし統計学的な考察を行う。また、ビスフォスフォネート製剤や分子標的薬などでもあわせて効果を確認する。さらに、近年海外を中心に臨床応用が報告されつつあるマパツムマブ(TRAIL-R1抗体に結合しアポトーシスを誘導する)の使用はin vitroでは多く報告されており、今後注目されていくことが予測され、あわせて検討する予定である。 さらに本年度はsTRAILをhMSCに導入し共培養する安定した系を確立し、sTRAILを導入されたhMSCと難治性白血病細胞株を共培養し抗腫瘍効果の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に大きな変更はなく、前年度の研究費もふくめ当初の予定通りの計画をすすめていく。 本年度は昨年度にひきつづきsTRAILをhMSCに導入し共培養する安定した系の確立を行う。このために必要な物品(フローサイトメトリー試薬、ELISAキット、制限酵素など)の購入を予定している。さらに検討項目として考えている分子標的薬試薬とTRAIL-R1抗体に結合するマパツムマブの購入を予定している。さらに関連学会における情報収集と研究の発表を行いたいと考えている。
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