研究課題
骨髄間葉系幹細胞(MSC)は多分化能を有する幹細胞で、腫瘍細胞などの異種抗原を認識し細胞浸潤する能力(組織ターゲッティング)を有する。TRAIL((tumor necrosis factor related apoptosis-inducing ligand)は腫瘍選択的にアポトーシスを誘導する。MSCにTRAILを組み込み、治療分子を腫瘍細胞へ送達する担体としての効果、腫瘍選択的アポトーシス誘導効果について検討を行うことを計画した。当初、難治性白血病の細胞株で検討したが系の確立に難渋したためMSC由来の小児悪性腫瘍であるユーイング肉腫(EWS)細胞株を用いた。EWSはきわめて難治で、自家造血幹細胞移植(SCT)併用の治療が行われることが多いことも選択した理由の一つである。抗腫瘍剤はシスプラチンを使用しアネキシンVを用いたフローサイトメトリー(FCM)で抗腫瘍効果を確認した。MSC単独では濃度を増やしても抗腫瘍効果の増強は得られなかった。MSCと抗腫瘍剤との併用で、抗腫瘍効果は増強する傾向が得られ、MSCの濃度依存性に抗腫瘍効果は増強する傾向があった。しかし一定の濃度以上になるとむしろ効果は減弱した。EWS細胞株のTRAILの発現はELISAを用いて確認した。次にTRAILをMSCに導入する過程として TRAILの可溶性部位をクローニングし可溶性TRAILを作成することを目標としたが現時点では確立できていない。MSCや腫瘍細胞株の培養、FCMなどそのほかの技術は確立されており、ひきつづき検討を行い、MSCの腫瘍に対する機能や作用機序、担体としての能力をあきらかにしていきたい。MSCは現在、細胞性医薬品として欧米から報告があり、国内でも近々に臨床応用が期待できる。SCTと組み合わせることで効果的な抗腫瘍効果を得られるのではないかと考え、この点も視野に入れて検討していきたい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件)
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