研究課題
難治性全身型若年性特発性関節炎(systemic juvenile idiopathic arthritis: sJIA)は持続する弛張熱、リウマトイド疹、関節炎を三主徴とする全身性炎症性疾患である。長期経過の中で治療にステロイドを用いることもあり、発症と同時に患児の成長が停止することが問題であり、また約7%の患児は感染症などを契機にマクロファージ活性化症候群へ移行して約3日の経過で予後不良となり、炎症を抑制する治療が待ち望まれていた。2000年当初よりわが国で開発された抗IL-6レセプター・モノクローナル抗体(tocilizumab:TCZ)が本症に著しい効果を示し(2008, Yokota S. Lancet)、わが国では2008年に本症への適応が承認され、現在では広く用いられるようになった。ところで、すでに報告したようにIL-6はin vitroの研究で成長板軟骨幹細胞の培養系に添加すると分化・増殖を著しく抑制する(2009, Nakajima S. Cytokine)。TCZはIL-6機能を阻止するので、患児の成長も回復が期待される。そこでTCZを長期にわたり投与したsJIA患児の成長を検討した。TCZを144週以上投与したsJIA 45例のうち38例(84%)は成長を果たした。残りの7例はすでに最終身長に達していたため評価はできなかった。年齢により成長の度合いが異なること、ステロイドの減量速度が症例により異なるなどの問題はあるが、TCZ治療開始後の成長速度には著しいものがあった(2012, Miyamae T. submitted)。現在、ステロイドの影響を除きTCZのみに関わる成長改善の分析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
In vitroの研究においても、実際のsJIA患児の成長の解析によっても、IL-6の持続的な暴露が成長障害に強い影響を与えていることが明らかになった。IGF-1が直接の成長阻害因子であるとの報告もあるが、in vitroではIGF-1は検出されないので、IL-6の直接作用であることも明らかにした。今後は、分子レベルでIL-6の成長板幹細胞に与える影響の検討をすすめる。
sJIAではIL-6過剰状態が長く続くことにより成長障害が生じることが明らかになった。また、同時に治療薬にステロイドを使用することにより成長障害はさらに加速される。したがって、本症に対するTCZの適応についてさらに検討を重ねて、できるだけ早期より使用できる条件の検討を行うことになる。
例年より選り安価な試薬等を使用したため、今年度は予定額より抑えることが出来たので繰越金が生じました。繰越金も含めH25年度は以下の研究を進めるのに研究費を使用する。In vitroでは、成長板軟骨幹細胞ATDC5をモデルに、IL-6による幹細胞の分化・増殖の抑制メカニズムについて膜結合型IL-6レセプターとgp130の機能を明らかにし、STAT3など伝達因子の動態について検討を加える。臨床的には、患児の年齢ごとにTocilizumab治療による成長の改善に関わる因子の解析をすすめる。
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Clin Rheumatol.
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Mod Rheumatol
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巻: 22 ページ: 491-7
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10.1007/s10165-011-0578-5
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