研究概要 |
全身型若年性特発性関節炎(sJIA)の患児にみられる成長障害は、全身炎症をもたらすキーサイトカインであるIL-6によって軟骨幹細胞の増殖が抑制されること、sJIAの治療に用いるステロイドが骨伸長を抑制することの双方が影響すると考えられる。抗インターロイキン(IL)-6受容体抗体であるトシリズマブ(TCZ)は高用量ステロイドに抵抗性もしくは不耐容である難治性sJIAの治療に用いられるが、TCZはIL-6阻害作用とステロイド減量の双方から成長障害の改善に寄与するものと期待されていた。 TCZの身長・成長速度に与える影響を検討するために、TCZの投与を開始されているsJIA患児45名について、身長の標準偏差(HTSDS)・成長速度の標準偏差(HVSDS)と、年齢・性別・罹病期間・ステロイド投与量・JIA core setによる治療効果といった各因子の相関について調査した。治療開始までの罹病期間と身長標準偏差は逆相関を示した。またステロイド投与量の減量と成長速度の改善にも強い相関が認められた。(2013, Miyamae T, Modern Rheumatology[epub])本検討においては、TCZによるステロイド減量効果と独立した因子として、sJIAという疾患自体がもたらす成長遅延に対してTCZがどのように寄与するかを明らかにすることができなかった。その理由としては、、ほぼ全ての症例において成長速度に影響を及ぼす程度のステロイドがTCZ開始前に投与されていたことが考えられた。
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