研究概要 |
我々は、平成24年度に以下のことを明らかにし発表した。 1、脱メチル化剤はATRAとの併用によりMLL-AF9陽性細胞のC/EBPa, C/EBPeの発現をATRA単剤に比して増強し、細胞増殖抑制効果の増強およびアポトーシスの促進効果を有し、ATRAのIC50を有意に低下させることを明らかにした。一方、MLL-AF4/AF5q31陽性細胞におけるATRA抵抗性の解除は見られず、MLL-AF4/AF5q31陽性細胞のATRA抵抗性はDNAのメチル化とは異なる機序が考えられた(Fujiki A, Imamura T, et al.Biochem Biophys Res Commun. 428: 216-223, 2012)。 2、MLL再構成陽性骨髄性白血病のATRA抵抗性の機序としてRARAのプロモーター領域のH3K4me2の程度が融合遺伝子の相手方遺伝子の種類により異なっていることを明らかにした。つまり、MLL-AF9陽性細胞ではMLL-AF4陽性細胞に比してH3K4me2の程度が低く、H3K4demethylaseである、LSD1の阻害剤がATRA抵抗性を解除し、MLL-AF4のATRA抵抗性を部分的に改善することを明らかにし、2012年の米国血液学会で報告した(Yano M, Sakamoto K, Imamura T, et al. 54th ASH annual meeting)。 以上の成果は、MLL再構成陽性急性骨髄性白血病の分化誘導療法の開発に向けた、基礎的データとして意義深いものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、平成24年度内にMLL再構成陽性急性骨髄性白血病(AML)にたいするATRAと脱メチル化剤の併用による分化誘導について、論文発表(Fujiki A, Imamura T, et al.Biochem Biophys Res Commun. 428: 216-223, 2012)を行った。 また、MLL-AF9陽性AMLにおいてATRA感受性が高い理由として、RARAのプロモーター領域のH3K4me2の割合が高いこと、MLL-AF4陽性細胞株ではその割合が低いことを明らかにした。また、LSD1阻害剤がATRA抵抗性の解除に有用であることも明らかにし、昨年の米国血液学会で発表し、現在論文を作成中である。
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