研究概要 |
本研究においては、MLL再構成陽性ヒト由来白血病細胞株、およびMLL-AF9, MLL-AF5q31強制発現マウス細胞株を用いて、各細胞株のATRA感受性を検討した。 その結果、MLL-AF9陽性細胞はATRA感受性を有し、MLL-AF4/AF5q31陽性細胞は、ATRAに低感受性であることが明らかとなった(Yoshida H, et al. Leuk Res. 2012, Fujiki A, et al. Biochem Biophys Res Commun. 2012, Sakamoto K, et al. Blood Cancer Journal 2014)。クロマチン免疫沈降法による解析の結果、RARA, PU.1, RUNX1のプロモーター領域のH3K4Me2の程度は、MLL-AF9陽性細胞ではMLL-AF4/AF5q31陽性細胞に比べて高いことが明らかとなり、MLL融合遺伝子の違いが、ATRA感受性の差に関わるメカニズムの一端と考えられた(Sakamoto K, et al. Blood Cancer Journal 2014)。 MLL-AF4/AF5q31陽性細胞株のATRA抵抗性の解除のため、Epigenetic modifierの有用性を検討したところ、脱メチル化剤の5-AzacitidineとATRAの併用では効果が認められなかったが(Fujiki A, et al. Biochem Biophys Res Commun. 2012)、mTOR阻害剤のRAD001をATRAと併用したところ、in vitroで、分化および細胞死誘導効果の増強を認め、C/EBPAのp42/p30比の上昇、21番目のSer残基の脱リン酸化を通してC/EBPAの機能増強に関わっていることが明らかとなった(Yoshida H, et al. Leuk Res. 2012)。 最後に、H3K4のdemethylaseであるLSD1阻害剤とATRAの併用を行ったところ、RARAのうろモーターのH3K4Me2の上昇を介して最も効率よく、ATRA抵抗性であるMLL-AF4/AF5q31陽性細胞株を分化および細胞死を誘導できることが明らかとなり、新たな分子標的療法の一つとしての可能性が示唆される結果であった(Sakamoto K, et al. Blood Cancer Journal 2014)。
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