研究課題
癌遺伝子EVI1の強発現によるエピジェネティクスな影響、なかでもヒストンメチル化に与える影響について検討した。昨年度構築したヒトEVI1発現ベクターに加え、免疫沈降反応や免疫蛍光抗体法でEVI1と他分子との相互作用を解析しやすいように、Flagエピトープを付加した全長EVI1(FlagEVI1full)またはN末端側252アミノ酸欠失EVI1(FlagEVI1delta)を発現するベクター(blasticidin S耐性遺伝子共発現)を構築した。これらのベクターを用いて、野生株ではEVI1を殆ど発現していないHEK293細胞に遺伝子導入し、EVI1の発現をイムノブロットと免疫蛍光染色で確認した。Blasticidin S耐性を獲得した細胞集団においても実際にEVI1を発現している細胞の割合は低かったため、限界希釈法にてFlagEVI1発現株を数クローン樹立した。FlagEVI1発現細胞について、H3ヒストンLys9(H3K9)のジメチル化(H3K9me2)・トリメチル化(H3K9me3)の程度と、H3K9メチル化酵素であるG9aとSUV39H1の発現を解析した。その過程で、現在入手可能な抗体の大半は感度や特異性が十分でなく、多種抗体の検討や新たなアッセイ法の導入・開発を行った。結果として、(1)イムノブロット用H3K9me2抗体・抗H3K9me3抗体・抗G9a抗体を選定し、(2)メチル化ヒストンを測定するELISA法を開発した。抗体特異性の問題は、EVI1発現細胞の頻度とも関連してイムノブロットや免疫蛍光抗体染色による定量の鍵となるので、ELISAやペプチドアレイなども用いて総合的な解析を進めている。
3: やや遅れている
研究実績の概要で述べたように、クロマチン修飾に関わる分子を検出するための抗体の大半は感度や特異性が十分でなかったため、さらに多数の抗体をスクリーニングする必要があった。これらの事実を勘案すると、従来実験事実として報告されている事項についても真偽を確認しつつ解析を進める必要が生じた。これらの事情により、予想された進展に比べて若干の遅れを生じた。
樹立したEVI1発現細胞株を用いて、当該癌遺伝子がヒストン修飾に与える影響の解析を進める。平成24年度末に導入されたオールインワン蛍光顕微鏡により、目的分子の細胞内局在同定の精度が上がり、定量的解析も可能になったので、これを駆使してヒストンメチル化に関わる因子の核内局在をさらに詳細に検討する。
物品費は修飾ヒストン定量ELISA用試薬、ペプチドアレイ、抗修飾ヒストン抗体等の消耗品購入に充当する。血液・癌関連の学会に参加してこの領域の情報収集・交換に努める。
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Cancer Research
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