研究課題
17;19転座型急性リンパ性白血病(以後t(17;19)+ALL)の融合転写因子E2A-HLFの下流遺伝子で白血病化や傍白血病症状を呈する候補遺伝子PTHrPの同定と機能解析を実施ししている。PTHrPのタンパクの発現が困難な状況であったが、immunoprecipition- Western 法で同定が可能となった。PTHrPは複数のsplice variantsがある。175aaと177aaの2つvariantsをPCR法でクローニングし、PMT-CB6+発現ベクターに組み込みt(17;19)-ALL細胞株とIL-3依存性マウスproB cellに導入し、発現する細胞株を得ることが出来た。今後、機能解析を実施する。レンチウイルスshRNA導入システムを用いたPTHrP knockdownを実施した。t(17;19)+ALL細胞株にSh-PTHrP導入し、タンパクとRNA両方でknockdownを確認した(Sh-PTHrP/t(17;19)+ALL細胞)。Sh-PTHrP/t(17;19)+ALL細胞はSh-control導入t(17;19)+ALL細胞(Sh-control/t(17;19)+ALL)に比べてアポトーシス細胞の増加とG0G1 arrestを確認した。このことはt(17;19)+ALLにおいてPTHrPが高カルシウムを誘導に加えて、白血病化や難治化に関与するという2つの面を持っていることを示す所見である。乳がん細胞においてPTHrPの発現はTRAIL/DR4, DR5を誘導する報告があたため、このSh-PTHrP/t(17;19)+ALL細胞とSh-control/t(17;19)+ALL細胞間で発現の差を検討したが、発現量の差は認めなかった。
4: 遅れている
immunoblotで検出可能なPTHrPの市販の抗体は得られなかった。Immunoprecipitation- Western法で確認ができたため、成果が出せるようになった。さらに、real time PCRの良いプライマーも設定できたため今後の実験が進むと考える。Sh-PTHrP/t(17;19)+ALL細胞システムでアポトーシスが誘導されたため、t(17;19)+ALLにおけるE2A-HLFによるPTHrPの発現誘導が白血病化に関与する可能性を示すことがきた。PTHrPのfull length cDNAのクローニングと発現ベクターの作成については 2種類のPTHrPのsplice variantsのZn誘導型PTHrP細胞株が得られている。抗アポトーシス機能と細胞浸潤機能などの細胞表現型を確認する予定である。PTHrP のnuclear localization signal (NLS)を有する中間部分の変異体は作成中で、完成すれば機能解析を実施したい。PTHrPのアポトーシス機能の解析は今後NLSの変異体によりはっきりと評価できると考えている。PTHrPがE2A-HLFの下流遺伝子であることの証明についてはPTHrPのプロモーター領域各フラグメントをpGL3 basic vectorに入れる作業中である。PTHrP各領域の細胞局在の決定について、免疫蛍光抗体法を試みたが、十分なシグナルが得られなかった。PTHrP抗体の問題で検出は困難な状況が続いている。PTHrP領域別細胞局在は検出できないが、各細胞分画のPTHrP発現をIP-Western法にて解析する。 Matrigel invasionアッセイは t(17;19)+ALLの骨転移機序の解明に重要である。実施予定で細胞と器具の準備をしている。
1年間研究期間の延長をお願いして実験を継続している。エフォートの比率を40%に上げて研究を実施する。PTHrPの機能解析を中心に実験を継続していく。Sh-PTHrP/t(17;19)+ALL がアポトーシスを誘導する結果が得られたことより、PTHrPがt(17;19)+ALLの白血病化に関与している可能性が高くなった。また、t(17;19)+ALL 特有の骨転移がPTHrPの細胞接着因子誘導により生じている可能性を予想している。得られたPTHrP発現誘導t(17;19)-ALL細胞株とIL-3依存性マウスpro B cellを使用して機能解析を行う。IL-3依存性マウスpro B cellはPTHrPの発現誘導で、細胞がIL-3非依存性を獲得するかを確認したい。さらにPTHrP のNLS変異体を導入したt(17;19)-ALL細胞株とIL-3依存性マウスpro B cellを作成したい。PTHrP-NLS変異体誘導細胞はPTHrPで得られた表現型が消失するのではないかと予想しており、確認をする予定である。以上の結果はPTHrPの中間部分が核内に移行して転写因子様機序で、抗アポトーシス機能を発揮し、t(17;19)+ALLの白血病化あるいは難治化に関与することの証明になる。Matrigel invasionアッセイを用いて同様の細胞システムで、PTHrPが細胞浸潤能力を誘導することを確認したい。これらの結果は、当初計画した小児白血病融合転写因子の白血病化と傍白血病症状を呈する下流遺伝子の同定を完結したと考える。遅れているPTHrPがE2A-HLFの下流遺伝子証明について、クローニングしたE2A-HLFのconsensus sequence類似領域をpGL3 basic vectorに組み込みE2A-HLF誘導システムを有するt(17;19)-ALL細胞株に導入し、レポーターアッセイを実施する予定である。
未使用額が発生した理由は、PTHrP発現をImmunoblot法で容易に確認できなかったことにより実験の進行に支障をきたしたためである。現在、Immunoprecipitation- Western 法で検出可能となっている。この結果はPTHrPのreal time-PCR法による結果と一致した。現在、PTHrPのknock downにより、t(17:19)+ALLのアポトーシス誘導が確認されており、PTHrPを発現誘導する細胞株も得られたため機能解析中である。残金は300,000円で試薬と人件費で使用する予定である。金額も少ないので、平成26年度内に使用終了予定である。Immunoprecipitation- Western 法とMatrigel Invasion試薬代金として使用する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Leukemia
巻: 未定 ページ: 未定
10.1038/leu.2013.366
臨床血液
巻: 54 ページ: 2167