研究課題
ダウン症候群の新生児では、芽球が末梢血中に出現して急性白血病様の血液像を示すも、無治療で自然に治癒する病態があり、一過性骨髄増殖症(transient myeloproliferative disease; TMD)などと呼ばれている。この疾患は胎児期の肝臓で起こる骨髄系腫瘍と考えられており、本疾患の自然治癒は、生後に造血の場が肝臓から骨髄に移行することと関係する可能性がある。本研究ではTMDの自然治癒機構を解明するため、胎児期の造血微小環境構成細胞とTMDの芽球の相互作用をin vitroの実験にて解析した。胎児期の造血臓器である肝臓と骨髄の間質細胞を人工中絶児から採取し、これを壁付着細胞としてTMDの芽球と共培養を行った。TMD芽球は胎児肝間質細胞の存在下で増殖が維持されたが、胎児骨髄間質細胞はそのような作用を示さなかった。胎児肝間質細胞によるTMD芽球の増殖維持作用は、両者間の細胞接触がなく液性因子のみの交通が可能な培養系でも認められたことから、造血因子がこれに関与すると考えられた。胎児肝間質細胞の培養上清をELISA法にて定量した結果、数種類の造血因子が高濃度で検出された。これらの造血因子に対する中和抗体の作用を解析したところ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する抗体が上記の活性を完全に阻害したが、その他の抗体はこのような作用を示さなかった。したがって胎児肝間質細胞から産生されるGM-CSFがTMD芽球の増殖維持に深く関わることが判明した。胎児肝間質細胞の性状を免疫組織化学にて検討した結果、間葉系幹細胞のマーカーとして知られる抗原とともに、上皮マーカーであるcytokeratin 8も発現しており、上皮間葉転換を示す細胞であることが示された。胎児肝造血にはこのような細胞が関与することが最近報告されており、本研究に用いた胎児肝間質細胞は、正常な胎児造血を制御するとともに、TMDの発症・進展、さらに自然治癒にも関与する可能性が示された。
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