研究課題
より安全な経口免疫療法の確立を目指して、オボムコイドを減量し、かつ、加熱して低アレルゲン化した鶏卵を用いた免疫療法を試みた。同時に、作用機序を明らかにして経口免疫療法の改良に役立てるべく、各種免疫学的解析を行った。 4-19歳の鶏卵アレルギー児80例(男43、女37)を対象に経口免疫量免疫療法を行った。低アレルゲン化鶏卵全量摂取が可能であった群の検討では、4週間のプラセボ対照試験で、プラセボ群の加熱卵白負荷試験陰性化率(以下陰性化率)が3.3%(1/30)、実薬群が20.8%(10/48)で、実薬群で有意に陰性化率が高かった。その後は、2ヵ月で34.1%、3ヵ月で76.4%が陰性化し、6ヵ月までに全例が陰性化した。全量摂取が不可能なため減量して施行した群は、10ヵ月で50%の陰性化率であった。実薬群7例、プラセボ2例に軽度の有害事象が認められたが、治療は要しなかった。 免疫学的な検索では、特異的IgEには変化が見られなかったが、卵白およびオボムコイド特異的IgG・IgG4は治療2ヵ月の時点で増加が認められた。卵白及びオボムコイドによる好塩基球活性化は、治療3ヵ月の時点でCD203c最高陽性%の低下が認められた。また卵白特異的T細胞の解析では、治療に伴い、卵白刺激により誘導される細胞質内IFN-γ陽性CD4+T細胞、およびIL-17陽性CD4+T細胞の低下が認められた。培養上清中のサイトカインの検討からはIFN-γの有意な低下、TGF-βの増加の傾向が認められた。サイトカイン関連遺伝子発現の検討では、治療に伴いSuppressor of cytokine signalling (SOCS)-1、SOCS-5発現が増加していた。 低アレルゲン化鶏卵を用いた免疫療法は安全かつ有効であるが、低アレルゲン化鶏卵にすら反応する重症例の対処法など、さらに検討すべき課題も残された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、経口免疫療法の作用機序や耐性獲得の機構を明らかにすることにより、安全で有効なアレルゲン特異的免疫療法を開発することを目的として、アレルゲン特異的T細胞応答並びに好塩基球の活性化を以下のように解析するものである。 これまでに、(1)緩徐増量法(2) 低アレルゲン化食品による免疫療法を行い、作用機序を検討する目的で、1アレルゲン特異的T細胞応答の検討として(1)CFSE dilution assay、(2)培養上清中のサイトカイン(3)サイトカインやサイトカインシグナルに関与するmRNAの発現2好塩基球活性化の検討ではCD203cの発現を指標とした塩基球活性化試験を行い、上述したような成果を上げてきた。活性化抗原CD154を用いたアレルゲン特異的T細胞応答の検討は、これまでにアッセイ法を確立して、食物アレルギー患者を対象に有用性が確認できたので、今後、経口免疫療法の対象者で解析して、治療による変化を検討していく。
今後も、アレルゲン特異的経口免疫療法の臨床試験参加者を対象に、同様の免疫学的解析を行う。 経口免疫療法としては、これまでに行った免疫療法に、加水分解乳、酵素処理魚肉エキスによる免疫療法を加え、以下の治療法を行う。(1)緩徐増量法;卵白、牛乳、小麦アレルギー患者を対象に、少量より開始し2-4週間ごとに緩徐に増量する。(2)アレルゲン化食品による免疫療法;オボムコイド減量加熱全卵、加水分解乳、酵素処理魚肉エキスなどの、アレルギー患者でも摂取可能な低アレルゲン化食品を継続的に摂取する。
経口免疫療法としては、(1)緩徐増量法(卵白、牛乳、小麦アレルギー患者を対象に、少量より開始し2-4週間ごとに緩徐に増量する)(2)アレルゲン化食品による免疫療法(オボムコイド減量加熱全卵、加水分解乳、酵素処理魚肉エキスなどの、アレルギー患者でも摂取可能な低アレルゲン化食品を継続的に摂取する)を行う。 同時に、これらの臨床試験に参加する食物アレルギー患者を対象に、1アレルゲン特異的T細胞応答の検討として(1)CFSE dilution assay、(2)活性化抗原CD154を用いたアレルゲン特異的T細胞応答の検討、(3)培養上清中のサイトカイン、(4)サイトカインやサイトカインシグナルに関与するmRNAの発現、2好塩基球活性化の検討ではCD203cの発現を指標とした塩基球活性化試験を行う。特に1アレルゲン特異的T細胞応答の検討では、新たにアッセイ系を確立した(2)活性化抗原CD154を用いたアレルゲン特異的T細胞応答の検討を中心に解析する。
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