研究課題
食物アレルギーに対するアレルゲン特異的経口免疫療法(oral immunotherapy(OIT))が注目され、有効性を示す報告が集積されつつあるが、一時的な脱感作ではない真の寛容を、安全かつ効率よく誘導する方法は確立されていない。我々は、より安全かつ有効なOITを目指して、低アレルゲン化食品を用いた経口免疫療法を試みるとともに、作用機序を明らかにして改良に役立てるべく、各種免疫学的解析を行ってきた。今年度は、鶏卵、牛乳、魚肉の3食品を対象に、以下のような検討を行った。鶏卵アレルギーに対しては、8週間の低アレルゲン化鶏卵(オボムコイド減量加熱鶏卵)継続摂取を行い、トシル酸スプラタスト(アイピーディ)併用の効果を、フマル酸ケトチフェン(ザジテン)併用と比較検討した。今年度の8例の検討では、トシル酸スプラタスト群の6例中6例、フマル酸ケトチフェン群の2例中1例が陽性にとどまったが、それぞれ安全閾値は低下していた。牛乳アレルギーに対しては、3例を対象として、加水分解乳を用いた緩徐漸増免疫療法を行い、制限解除には至らないものの閾値が上昇した。副反応はみられず、重症者でも安全に家庭での継続が可能であった。また、活性化抗原CD154を指標とした、アレルゲン特異的サイトカイン陽性細胞の同定を試み、牛乳アレルギー患者では、牛乳特異的IL-4及びIL-5産生細胞が対象に比し有意に増加していることを示した。魚アレルギーに対しては、5例を対象に、12週間単位の酵素処理魚エキス継続摂取を行い、9ヵ月継続し得た1例では、魚肉の安全閾値が、0.3gから20gに増加した。特記すべき副反応は認められていない。以上、鶏卵、牛乳、魚肉の3食品を対象に、低アレルゲン化食品を用いた経口免疫療法を試み、併せて、作用機序を解明して治療法の改善に供するべく、免疫学的検索を行った。
3: やや遅れている
本研究は、安全で有効なアレルゲン特異的免疫療法を開発することを目的として、低アレルゲン化食品による経口免疫療法を行い、併せて、経口免疫療法の作用機序や耐性獲得の機構を明らかにするために、アレルゲン特異的T細胞応答並びに好塩基球の活性化を以下のように解析するものである。これまでに上記3種類の低アレルゲン化食品を用いた経口免疫療法に着手し、塩基球活性化試験や活性化抗原CD154を用いたアレルゲン特異的T細胞応答の検討を行った。低アレルゲン化食品の供給面の問題もあって、免疫療法の臨床試験に参加していただく症例数が限られたこと、アレルゲンの種類によってはによっては、特異的T細胞数が少なく、技術的に検出が難しいなどの困難があったため、研究は当初の頚窩うよりやや遅れている。
今後も、アレルゲン特異的経口免疫療法の臨床試験参加者を対象に、今年度と同様の免疫学的解析を行う。経口免疫療法としては、低アレルゲン化鶏卵、加水分解乳、酵素処理魚肉エキスによる低アレルゲン食品を用いた免疫療法を主として行う。免疫学的解析では、塩基球活性化試験や活性化抗原CD154を用いたアレルゲン特異的T細胞応答の検討など、免疫療法の機序の解明に努め、成果を治療法の改善に役立てる。
経口免疫療法としては、低アレルゲン化食品(オボムコイド減量加熱全卵、加水分解乳、酵素処理魚肉エキスなどの、アレルギー患者でも摂取可能な食品)による経口免疫療法を行う。同時に、これらの臨床試験に参加する食物アレルギー患者を対象に、活性化抗原CD154を用いたアレルゲン特異的T細胞応答の検討やCD203cの発現を指標とした塩基球活性化試験を行い、経口免疫療法の機序の解明に努める。これらの解析に用いる機器に関しては、学内共通機器を含め現有しており、研究費の使途は主に試薬や研究資材などの消耗品となる。
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