研究課題
これまで花粉抗原と交差反応性を有する果物・野菜によるアレルギー症状の診断に関して、交差抗原性を証明するIgE競合試験がよく用いられている。しかし、IgE競合性が証明されても臨床症状とのギャップが生じることがあり、その原因としてIgE抗体の交差抗原性を有するがアレルギー症状を誘発しない糖鎖(cross-reactive carbohydrate determinant :CCD)の関連性が指摘されている。しかし糖鎖が症状を誘発しうるという研究報告もありアレルギー交差反応性における糖鎖の関与はわかっていない。そこで今回、よりよい診断法を確立するために、我々は独自のアイデアによりIgE 競合試験と好塩基球活性化試験まで連続して行う新しいシステムを開発しin vitroアレルギー診断の向上を測るとともに糖鎖の意義についても検討した。方法は、スギ花粉症でトマト特異的IgE陽性者19名を選びOASの病歴および抗CCD抗体の測定を行った。両抗原間の交差抗原性はELISA inhibitionとimmunoblot inhibitionで検討し、交差反応性はinhibition法と受身感作好塩基球活性化を組み合わせた受身感作好塩基球活性化吸収試験で検証した。結果はいずれの患者でも従来の方法ではCCDの値に関係なく交差抗原性がみられたが、新しい検査法では違いがみられた。つまり、トマトIgE抗体価とCCD抗体価を比較した際にトマトIgE抗体価がCCD抗体価より明らかに高い症例では好塩基球活性化とトマトOASがみられ、両者が同等の場合は好塩基球活性化およびOASがみられないことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
本研究で以下の事がこれまでに明らかになった。1、トマト摂取後に口腔アレルギー症状(OAS)を起こす患者の一部は糖鎖に対するIgE抗体が陽性であることがわかった。2、糖鎖に反応する患者はトマト46kDaのタンパクに反応していることがわかった。3、OAS症状を訴える患者の多くはトマト14kDaにも反応が見られることがわかった。4、トマト46kDaもトマト14kDaもスギと交差する事が分かった。5、交差反応性を評価するために従来行われている検査法は、単独では患者が反応する蛋白の違いを知ることが出来ないため、臨床症状の評価が出来ない。6、新たな検査法は交差反応性の評価と臨床症状の評価が出来ることが分かった。
1新たな検査法の有用性についての検討:果物アレルギーの真の感作源を見分ける際に、従来の検査法より有用かどうか検討するため、果物アレルギー患者でスギ以外の花粉抗原で検討する。果物によるOASの治療は、感作源である花粉に対する特異的減感作療法で軽快する。真の感作源を見分けることは、患者の予後に影響する。2検査法の改良:受身感作の際にドナー血球の代わりに臍帯血血球が使用できるか検討3花粉症における果物アレルギー実態調査:アンケートを用いて行う。
研究に必要な各種抗体の購入費、主に海外の学会報告のための準備費、校正費用、実態調査のためにアンケート印刷代など。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Ann Allergy Asthma Immunol
巻: 110 ページ: 305-306
10.1016/j.anai.2013.01.008.
巻: 110 ページ: in press
10.1016
Pediatr Pulmonol.
巻: 48 ページ: in press
0.1002
Clin Exp Allergy Rev
巻: 12 ページ: 25-28
DOI: 10.1111/j.1472-9733.2012.01167.x