研究課題/領域番号 |
23591558
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
井上 彰子 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90330076)
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研究分担者 |
瀧谷 公隆 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80319540)
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キーワード | 急性前骨髄球性白血病 / レチノイド / エピジェネティクス |
研究概要 |
急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia; APL)に対するall-trans retinoic acid (ATRA)療法は、APLの染色体15;17転座に伴うPML/RAR融合遺伝子を標的とした分子標的療法である。APLの治療はATRAによる分化誘導療法であり、ATRAと化学療法の併用により高い寛解率(88-95%)と長期生存が得られるようになった。しかし、ATRA耐性細胞の出現が、分化誘導療法の大きな壁となっている。近年、難治性APLに対応するために、新規化合物の創薬が報告されている。またATRAの分化誘導療法において、細胞分化のエピジェネティクス機構が解明されつつある。本研究では、新規レチノイドにおいて、APL細胞およびATRA耐性APL細胞分化のエピジェネティクス機構への影響を検討する。現在の進行状況は、下記の通りである。 1)APL細胞において、レチノイドにより誘導される標的遺伝子群の解析 レチノイド化合物をAPL細胞に添加し、RNAを抽出、マイクロアレイを実施した。その結果、抗菌ペプチド(defensin)以外に、表面抗原マーカー(CD11b)、転写因子(CEBP ε)、免疫タンパク質(leukocyte immunoglobulin-like receptor, B4)などの発現上昇を認めた。 2)レチノイドが変異RAR/PML融合タンパク質とMLL5の相互作用に及ぼす影響 レチノイド化合物の存在下で、MLL5およびRAR/PML融合タンパク質の転写活性への影響および両蛋白の相互作用を検討する。PCR法にて、MLL5遺伝子を増幅し、CMVベクターに組み込む。また、変異RAR/PML融合タンパク質を構築するために、PCR Mutagenesis法にて、変異導入を行い、変異PML/RAR-CFPベクターを作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「レチノイドが変異RAR/PML融合タンパク質とMLL5の相互作用に及ぼす影響」の実験において、変異RAR/PML融合タンパク質発現ベクターの構築に時間がかかってしまった。また、「レチノイド添加によるヒストン蛋白メチル化の影響」において、発現タンパク質の構築に時間がかかってしまった。そのため、メチル化実験は、次年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)レチノイドが変異RAR/PML融合タンパク質とMLL5の相互作用に及ぼす影響 転写活性実験(ルシフェラーゼアッセイ)を行う。レチノイド化合物の存在下で、MLL5発現ベクター、変異RAR/PMLベクター、RARE応答配列-pGL3ベクターをCos細胞にトランスフェクションする。MLL5の変異RAR/PML融合蛋白の転写活性の影響を検討する。 2)レチノイド添加によるヒストン蛋白メチル化の影響 Flag tag MLL5-CMVベクターを構築し、新規レチノイドの添加細胞にトランスフェクションする。抗H3-リジン4抗体にてWestern blotを行い、メチル化を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
合計100万円の内訳は、分子生物実験試薬代60万円、培養細胞試薬代20万円、プラスチック製品代10万円、校正謝金10万円の予定である。今回、ヒストン蛋白メチル化実験(含む培養細胞・PCR・蛋白発現実験)が少し遅れており、次年度使用額(578,407円)をこれらの分子生物実験試薬(含む抗体)およびプラスチック製品に充当する予定である。
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