研究課題
樹状細胞(DC)欠損を伴うB,NK細胞欠損症患者2例で、原因遺伝子の同定を行った。患者は2例とも非近親婚家系であったが、SNP chipによる、homozygosity mappingを行った。平行して2例について、exome解析を行い、共通して変異を認める遺伝子に着目し、原因遺伝子を同定するべく解析を行った。dbSNPにないヘテロの変異を持つ遺伝子を1000前後認め、ホモの変異をもつ遺伝子も100前後認められた。この中から共通して変異を認める遺伝子について解析している際に、同様の表現型を示す症例の報告が相次ぎ、その原因遺伝子がGATA2であることが報告された。このため、当該2症例についてもGATA2遺伝子について検討し、それぞれde novoの変異を同定した。さらに、同様のB、NK、DC欠損患者および骨髄異形成症患者4例でGATA2遺伝子異常を同定した。次に、GATA2変異患者のT細胞について検討した。CD4+細胞比率は低下しており、CD45RA+31+4+胸腺ナイーブT細胞が減少し、CD45RA+31-4+中枢性ナイーブT細胞が増加していた。これを反映し、T細胞新生能を反映するTRECの低下を認めた。また、活性化CD4+T細胞におけるIL-4, IL-17産生はそれぞれ低下していた。また、患者から得られた骨髄をサイトカインで刺激し、血球分化について検討した。赤芽球系、骨髄球系への分化については、正常もしくはそれ以上のコロニー形成が見られた。一方、GMコロニーや単球コロニーについては、有意に低下していた。また、リンパ球系への分化を試みたが、リンパ球コロニー解析用培地では、正常に比べ形成が不良であり、GATA2が造血幹細胞からリンパ球、単球、DCへの分化に必須の因子であり、変異遺伝子がドミナントネガティブ効果がある可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
23年度に予定していた計画のうち、原因遺伝子の同定について、一部の患者で、達成できた。また、原因遺伝子の同定できた6例について、病態解析を行い、T細胞の分化異常について明らかにした。患者細胞株樹立についても、活性化T細胞株、骨髄由来間葉系幹細胞株を樹立し、保存した。一方、それ以外の患者のexome解析は、まだ行えておらず、GATA2異常患者のiPS細胞株樹立についても、平成24年度に持ち越し、継続して行う。
平成24年度は、23年度に予定していた、原因不明の樹状細胞欠損症、B細胞欠損症、NK細胞欠損症で、GATA2変異を認めなかった症例について、家族検体を含みexome解析を行い、それによる候補遺伝子の絞り込みを行う事で、効率的に原因遺伝子を探索する。特に、GATA2により制御される遺伝子、あるいはGATA2の発現を制御する遺伝子については、有力な候補と考えられるので、優先的に解析する。また、GATA2患者の骨髄由来間葉系幹細胞株を用いて、iPS細胞にし、CD34+血液幹細胞分化誘導、DC分化誘導を行い、野生型GATA2導入による分化回復効果、あるいは、コントロール細胞株への変異GATA2導入による分化障害の有無について検討する。B、NK細胞への分化誘導についても引き続き検討する。分化誘導の際、影響を受ける遺伝子について、RNAseqあるいはtranscriptomeを用いて、同定し、病態について明らかにする。GATA2変異の影響については、RT-PCR、Western blotによる発現解析を行う。
上記の実験に必要な遺伝子解析用試薬、モノクローナル抗体、培養用試薬、消耗品を中心とした物品費、および、研究発表、情報交換のための欧州免疫不全症学会参加のための旅費、滞在費、参加費、また、分担研究者との研究打ち合わせのための交通費等に研究費を使用する。
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 9件)
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