研究課題/領域番号 |
23591561
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
今井 耕輔 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90332626)
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研究分担者 |
大嶋 宏一 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (60525377)
土方 敦司 独立行政法人理化学研究所, 免疫ゲノミクス研究グループ, リサーチアソシエイト (80415273)
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キーワード | 原発性免疫不全症 / 樹状細胞分化 / B細胞分化 / NK細胞分化 / GATA2 / 骨髄異形成症候群 / ナイーブT細胞 |
研究概要 |
24年度には、23年度に同定したGATA2欠損症患者のうち1例について、症例報告を論文発表した。さらに樹状細胞欠損患者および家族性骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病を呈する患者から、GATA2遺伝子の異常を伴う患者を計12例同定した。うち6例は、23年度に同定した2例と同様、細胞内寄生菌感染(サルモネラあるいはマイコバクテリア感染、5例)あるいは重症水痘感染(3例)を合併し、B細胞、NK細胞、単球、樹状細胞欠損を呈しており、CD4+T細胞の減少を伴っていた。それ以外の6例は家族性MDSの3家系であり、全例造血幹細胞移植を受けていた。移植前の末梢血の検討は2例で行い、樹状細胞欠損は2例とも認めたが、B細胞、NK細胞減少は2例のみであった。なお、CD4+T細胞減少は2例とも見られた。 全例で共通するCD4+T細胞減少について、さらに詳しく検討した。その結果、CD45RA+CD4+T細胞は正常と同程度存在するものの、CD31+のRecent thymic emigrantの割合が低かった。そのため、TRECは全血由来DNAで3例で感度以下、3例で正常下限であった。IFNγ産生細胞は正常であるが、IL4産生細胞、IL17産生細胞は低値を取っており、T細胞の分化にもGATA2が関わっている可能性がある。 新規GATA2変異患者については、活性化T細胞株、骨髄由来間葉系幹細胞株を樹立し、保存した。最初の2例については、骨髄由来間葉系幹細胞および皮膚由来線維芽細胞株からのiPS樹立を開始した。 また、他の5例の樹状細胞欠損例についてexome解析を行い、3例で、GATA2の上流分子の異常を同定した。引き続き、25年度に機能解析について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度に予定していたExome解析から新たに3例のGATA2上流新規分子の変異同定に至っている。1例については、骨髄異形成症候群にリンパ浮腫を伴うEmberger症候群と細胞内寄生菌、VZVウイルスの重症感染症を合併した特異な臨床経過をたどっているため、症例報告を行った(Ishida, et al, Eur J Ped, 2012)。また、GATA2変異患者も前年の6例から倍増し、12例となった。すでに移植している患者が多く、移植前検体を得ることが困難ではあるが、全例生存しており、iPS細胞樹立からの機能解析を行うことができれば、病態解析の点できわめて有効であると考えられる。iPS細胞樹立についても2例ではあるが開始しており、25年度に向けてさらに症例数を重ね、分化誘導実験を行う予定である。 また、T細胞の機能解析についても進め、T細胞新生能が低下していること、Th2,Th17細胞が減少していることも明らかにし、症例数を増やした。これについても、GATA2蛋白の量的変化の有無も含め、検討中である。 以上のように、おおむね計画通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、GATA2変異を認めなかった原因不明の樹状細胞欠損症、B細胞欠損症、NK細胞欠損症で、家族検体を合わせてexome解析を行い、候補遺伝子の絞り込みを行う事で、効率的に原因遺伝子を探索する。特に、GATA2により制御される遺伝子、あるいはGATA2の発現を制御する遺伝子については、有力な候補と考えられるので、優先的に解析する。 また、GATA2患者2例から樹立したiPS細胞を、CD34+血液幹細胞分化誘導、樹状細胞への分化誘導を行い、野生型GATA2導入 による分化回復効果、あるいは、コントロール細胞株への変異GATA2導入による分化障害の有無について検討する。これにより、GATA2ヘテロ変異がドミナントネガティブ効果によるものか、ハプロ不全によるものかを明らかにする。NK細胞への分化誘導についても引き続き検討する。分化誘導の際、影響を受ける遺伝子について、RNAseqあるいはtranscriptomeを用いて、同定し、病態について明らかにする。GATA2変異の影響については、RT-PCR、Western blotによる発現解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の実験に必要な遺伝子解析用試薬、モノクローナル抗体、培養用試薬、消耗品を中心とした物品費、および、研究発表、情報交換のための学会参加のための旅費、滞在費、参加費等に研究費を使用する。
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