研究課題
樹状細胞(DC)欠損症解析については、25年度に新たに2例のGATA2欠損症を見出した。総計14例について、B細胞、NK細胞、DC、単球、マクロファージ(Mφ)欠損に加え、初期からサイトカイン産生に至るまでのT細胞分化異常も伴っていることを見出した(投稿中)。このうち2例の骨髄由来間葉系幹細胞からiPS細胞を樹立した。iPS細胞樹立については、健常人と同程度の効率であったが、造血幹細胞への誘導効率は不良であり、骨髄由来CD34+造血幹細胞からの分化誘導実験を裏付ける結果であった。現在、単球、Mφ、DCへの誘導実験を行い、各段階における転写因子発現等について、検討中である。今年度は、214例の免疫不全症疑い患者の紹介を受け、解析を行った。うち、抗体産生不全症は、57例であった。今年度の紹介患者の中には、DC欠損症はなかったが、これまでに蓄積された分類不能免疫不全症(CVID)において、T細胞受容体遺伝子再構成断片(TREC)、免疫グロブリンκ鎖遺伝子再構成断片(KREC)定量を行ったところ、4群に分かれることを見出した。CVIDの中で半数の患者で、TRECまたはKREC、あるいは両方の値が感度以下の低値であった。この4群については、臨床的合併症(日和見感染、自己免疫疾患、悪性腫瘍)の頻度との相関が見られ、予後の推定に有用であることが示された(Kamae et al, JACI, 2013)。さらにKREC低値のB細胞欠損症の中からExome解析により、FANCE遺伝子の複合へテロ変異を有する成人症例を見出した。この症例について、抗がん剤に対する感受性を調べたところ、染色体の脆弱性を示すことが明らかになり、日本で初のFANCE欠損症と診断された。Fanconi貧血33例について、TREC,KRECを検討したところ、TREC低下を2例に、KREC低下を7例に認め、Fanconi貧血患者でもリンパ球の分化異常を認めることが明らかになった。Fanconi貧血患者での免疫系細胞への分化能についても、今後さらに検討していく予定である。
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