研究課題/領域番号 |
23591566
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 宏樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10373515)
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研究分担者 |
和田 和子 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (30294094)
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キーワード | 胆汁うっ滞 / FGF19 / FGF21 |
研究概要 |
前年度に、乳児期より体重増加不良、成長障害、脂溶性ビタミン吸収障害をしばしば来す、胆汁うっ滞性肝障害罹患児における糖・脂質代謝のダイナミズムについて検討するべく当施設倫理委員会に臨床研究計画書を提出し承認を得た。対象は、当院にて胆汁うっ滞性肝障害のため肝移植を実施した胆道閉鎖症、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の患児とし、肝芽種やオルニチントランスカルバニラーゼ欠損症にて肝移植を行った児を対象とした。同意を得て得られた血清と肝移植時の摘出肝を用い、FGF21に加え同様にホルモン用の作用を示し体内の胆汁酸プールを制御するFGF19の測定をELISAにて行った。すると、生理的には肝臓では発現の少ないはずのFGF19が胆汁うっ滞肝では著明に高値を示しており、胆汁酸の律速酵素であるCYP7A1の発現も低下していた。生理的にはFGF19の産生は小腸上皮細胞で行われているが、慢性胆汁うっ滞肝で実際にFGF19の産生が行われているか組織in situ hybridization法および組織免疫染色法を用いて調べると、実際に、肝細胞において産生が行われていた。同様に、FGF21に関しても胆汁うっ滞群で明らかに高い傾向があった。さらに、その肝臓におけるシグナル伝達経路につき調べた所、FGFR4および共受容体KLBの発現がdown regulateしており、細胞内ERKのリン酸化も低下していた。 現在、その詳細なメカニズムに付き検討を行っている。 子宮内発育遅延マウスに関しては、生後8週齢のマウスを交配し膣栓を確認した後、8%蛋白制限食群と20%蛋白食(通常食)群の2群に分け、飼育を行った。現在、引き続きサンプリングを行い基礎データ収集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清および肝組織中のFGF21、FGF19濃度測定のためELISA法によるアッセイ系を確立し、さらにヒトFGF19およびFGF21をPCRにてクローニングした後、肝組織におけるin situ hybridization法と免疫染色の系も確立した。これらを用いて解析を行うと、生理的には肝臓では発現のないはずのFGF19が胆汁うっ滞肝では著明に高値を示しており、組織in situ hybridization法および組織免疫染色法を用いて調べると、実際に、肝細胞において産生が行われていることを初めて明らかに出来た。そのため、当面、こちらの成果発表を優先に研究を進めている。 子宮内発育遅延マウスの作製に関しては、生後8週齢のマウスを交配し膣栓を確認した後、8%蛋白制限食群と20%蛋白食(通常食)群の2群に分け、飼育を行った。現在、引き続きサンプリングを行い基礎データ収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ヒト胆汁うっ滞性疾患に関するFGF19の知見は、今年度中に実験結果をまとめ、論文作成を行うこととする。また、慢性胆汁うっ滞肝において、何故、FGF19およびFGF21の産生が上昇するのか、そのメカニズムについても検討を行っていく予定である。 子宮内発育遅延マウスについては現在、トラブルシューティング中であるが次年度中には新生仔の身長、体重、ならびに肝臓および脂肪組織の重量を測定し、肝臓中のグリコーゲン貯蔵量、トリグリセリド含有量、血清中の血糖、インスリン、βヒドロキシ酪酸、トリグリセリドを測定し、両群におけるインスリン抵抗性、ケトン合成能、脂肪分解能を比較する。さらに、胎仔肝における遺伝子発現プロファイルの違いをマイクロアレイ法にて比較する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の通り、ヒト胆汁うっ滞性疾患に関するFGF19の知見は、今年度中に実験結果をまとめ、論文作成を行うこととする。 予定の遅れを挽回すべく、子宮内発育遅延マウスについて次年度中には新生仔の身長、体重、ならびに肝臓および脂肪組織の重量を測定し、肝臓中のグリコーゲン貯蔵量、トリグリセリド含有量、血清中の血糖、インスリン、βヒドロキシ酪酸、トリグリセリドを測定し、両群におけるインスリン抵抗性、ケトン合成能、脂肪分解能を比較する。さらに、胎仔肝における遺伝子発現プロファイルの違いをマイクロアレイ法にて比較する予定である。
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