研究課題
当院倫理委員会で承認され、以下の患者に対し研究内容を説明し同意を得た。胆汁うっ滞患者として胆道閉鎖症9名、対照として非胆汁うっ滞患者4名(肝芽腫2名、肝血管腫1名、OTC欠損症1名)の正常部位を使用した。血清、肝組織中のFGF21,19蛋白濃度をELISA法にて測定。レーザーマイクロダイセクション法を用いて肝小葉を切り出し抽出したRNAを用いてcDNAを合成し、定量PCRを行った。また、FGF19の肝組織における発現を証明するためin situ Hybridizationおよび免疫染色を行った。FGFシグナル伝達分子のリン酸化に関しては、免疫沈降ウエスタンブロット法を用いて行った。その結果、①肝移植時における慢性胆汁うっ滞患児の血清FGF21およびFGF19濃度はともに増加していた。②慢性胆汁うっ滞肝においてFGF19の少なくとも一部は肝細胞が異常に産生していることを初めて明らかにした。③高胆汁酸血症においても肝臓では胆汁酸合成律速酵素CYP7A1の合成は抑制されていなかった。④核内転写因子FXR/SHPは有意に増加し、その下流にあるSHPも有意に高かった。同様にCYP7A1の上流転写因子であるLRH-1、HNF4αも同様に発現増加を認めた。⑤高FGF19血症の状況下においてFGF19の受容体であるFGFR4およびKLB は発現が増加し、FGFR4のリン酸化も亢進していた。⑥その下流のERKのリン酸化は抑制されていなかった。以上より、慢性胆汁うっ滞の状況では、高FGF19血症となり肝細胞表面においてFGF19の受容体であるFGFR4およびKLB は発現が増加し、FGFR4のリン酸化も亢進するが、その下流のERKのリン酸化は抑制されておりこのことから、ERK経路より下流に位置するSHPがCYP7A1 発現を抑制できていないことが示唆された。
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