研究課題/領域番号 |
23591567
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小垣 滋豊 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00311754)
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研究分担者 |
市森 裕章 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (60467553)
石田 秀和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (50467552)
高橋 邦彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (10610230)
那波 伸俊 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30617543)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / CNP / ナトリウム利尿ペプチド受容体 / cGMP |
研究概要 |
本年度はNPR-B変異体(Mut-NPR-B)と、対照としてWT-NPR-B及びGFPをそれぞれ組み込んだアデノウイルスベクターを作成。これらのウイルスベクターを用いてヒト肺動脈平滑筋細胞(PASMC)に遺伝子導入し、細胞内cGMPの動態と細胞死及び増殖能について検討した。さらに、Sprague-Dawley ratに対してVEGF受容体拮抗薬(SU5416)の投与と低酸素環境を組み合わせた肺高血圧モデルラットの作成を試みた。結果は、NPR-B変異体発現PASMCではリガンドであるCNPを添加していない状態で、細胞内cGMPが著しく上昇し(GFP, 0.097±0.050 pmol/L; WT-NPR-B, 0.084±0.039 pmol/L; Mut-NPR-B, 18.09±1.39pmol/L)、CNPの添加によりcGMPはさらに上昇した。次に、増殖能を検討したところ、遺伝子導入48時間後の細胞数は対照群に比してNPR-B変異体発現細胞で有意に減少しており、EdU取り込み能も抑制されていた(EdU 陽性率: GFP, 8.8±1.3; WT-NPR-B, 9.9±1.8; Mut-NPR-B, 6.2±2.4)。また遺伝子導入48時間後に認めた細胞数の差が細胞死によるものかどうかを検討するためにTUNEL染色を行ったが、apoptosisの程度に明らかな差は認めなかった。現在、SU5416を用いた肺高血圧症モデルラットを用い、変異体ウイルスベクターを経気道的に投与する実験的治療の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroにおいては現在までに変異型NPR-Bを肺動脈平滑筋細胞に発現させ、細胞内cGMPの動態を解析し、その結果としての細胞増殖抑制を細胞数の計測とEdU assayにて検討した。また肺高血圧モデルラットに関しては従来用いられているhypoxia-induced PAHやmonocrotaline-induced PAHではなく、最近評価が確立してきているVEFG受容体拮抗薬であるSU5416を用いた肺高血圧症モデルラットを採用し、現在そのモデルの作成を行っているところである。in vivoの実験に関しては現在までに気管内投与による遺伝子導入を確立しその効率をGFPによって確認した。またカテーテルを用いたラットの血行動態評価の確立も現在行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後in vitroにおいては、NPR-B変異体発現細胞において認められた増殖抑制のメカニズムをさらに詳細に検討するためにFACSを用いたcell cycle assayを行い、cell cycleを制御する蛋白のwestern blot等も行う予定である。またin vivoにおいては、気管内にウイルスベクターを投与後の強制発現蛋白の発現動態を検討するために、ラットに対してウイルスを気管内投与後した3日後、1、2、3週間後の肺組織を採取し、免疫染色、cGMP濃度を測定する予定である。SU5416を用いた肺高血圧症モデルラットを作成し、肺高血圧の組織学的検討、血行動態評価を行った後、変異型NPR-Bをウイルスベクターを用いて気管内投与し、組織学的検討、血行動態評価を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
FACSを用いたcell cycle assay kitの実験に際して、FACSに必要な消耗品、kitの購入をする必要がある。またcell cycleを制御する蛋白のwestern blotに必要な各種抗体が必要である。ラットの飼育費やPHモデル作成に際してSU5416を追加購入する必要がある。肺高血圧の組織学的検討に必要な抗体類や、血行動態評価のカテーテル検査時に必要な各種消耗品を購入する必要がある。
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