研究課題/領域番号 |
23591568
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岡田 晋一 鳥取大学, 医学部, 講師 (50343281)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ネフローゼ症候群 / 糸球体上皮細胞 / 低真空型走査型電子顕微鏡 |
研究概要 |
今年度はステロイド感受性ネフローゼ症候群 2例とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群 3例について検討した。 光学顕微鏡での所見は、ステロイド感受性ネフローゼ症候群全例が微小糸球体変化であり、一方、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群は、糸球体硬化を認めた。 低真空走査型電子顕微鏡(低真空SEM)での観察は、まず白金ブルー染色の後に行った。ステロイド感受性ネフローゼ症候群では、糸球体上皮細胞足突起について、一次、二次突起ともほぼ正常であったが、一部にその配列の乱れを認めた。糸球体上皮細胞体の球形化の所見はほとんど認められなかった。一方、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群では、糸球体上皮細胞足突起の癒合と考えられる所見を一部に認めた。また糸球体上皮細胞体の球形化の所見が多くの糸球体にみられた。この糸球体上皮細胞体の球形化の所見は硬化のない糸球体に見られており、硬化のない一見正常である糸球体(微小糸球体変化)であっても、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群とステロイド感受性ネフローゼ症候群とでは異なる病因によって形成されている可能性が示唆された。この知見は腎死に至る率の高いステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の発症病因解明に近づくものと考えられた。 次に、PAM染色を行った切片で糸球体基底膜の評価を低真空SEMを用いて行った。その結果、ステロイド感受性ネフローゼ症候群、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群のいずれにも基底膜の蛇行や厚さの不均一性が認められた。このことからネフローゼ症候群における糸球体基底膜の蛇行などの変化はステロイドの感受性の有無にかかわらず一般的な変化である可能性が考えられた。 以上より、糸球体上皮細胞の形態変化はネフローゼ症候群の病態に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネフローゼ症候群の腎組織について、低真空型走査型電子顕微鏡をもちいて検討を行った。その結果、ステロイド感受性ネフローゼ症候群とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群とでは糸球体上皮細胞体の形態が異なっていることを示した。これは本研究において重要な結果であり、この結果を初年度に得られたことは、当初の計画と比較して順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で得られた、ステロイド感受性ネフローゼ症候群とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群とでは糸球体上皮細胞体の形態が異なっているという所見の意義を検討する。そのために、細胞骨格に対する抗体(α-アクチニン4,シナプトポジン,アクチン)、上皮細胞足突起スリット膜タンパク抗体(ネフリン、ポドシン)を用いて免疫染色を行い、低真空型走査型顕微鏡で得られた糸球体上皮細胞体の形態変化と細胞骨格、足突起スリット膜の変化との関連を検討する。また、糸球体上皮細胞とメサンギウム細胞との連関を検討するためにgap結合蛋白であるコネキシンを用いて免疫染色を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に請求する研究費により、ネフローゼ症候群症例に対する免疫染色を行うための抗体などを新たに購入する。また研究の打ち合わせ、情報収集のために学会参加を行う。一方、新たな慢性腎炎症例での免疫染色施行などを視野に入れており、これは次年度に使用する研究費を用いて行う予定である。
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