研究課題/領域番号 |
23591568
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岡田 晋一 鳥取大学, 医学部, 准教授 (50343281)
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キーワード | ネフローゼ症候群 / 糸球体上皮細胞 / 低真空走査型電子顕微鏡 |
研究概要 |
初年度で得られた、ステロイド感受性ネフローゼ症候群とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群とでは糸球体上皮細胞体の形態が異なっているという所見の意義を検討するために、細胞骨格に対する抗体(α-アクチニン4、シナプトポジン)、上皮細胞足突起スリット膜タンパク抗体(ポドシン、CD2AP)で腎生検組織に対し酵素抗体法免疫染色を行った。そして、それぞれの染色性を画像解析ソフトを用いて定量的に解析した。 ステロイド感受性 4例(うち1例はステロイド抵抗性から感受性に変化)、ステロイド抵抗性 3例について検討した。α-アクチニン4、シナプトポジン、CD2APは両群間で差は認められなかったが、ポドシンについてはステロイド抵抗性群が感受性群より染色性が優位に低下していた。また検討した抗体の染色性が他症例より特に低下している症例があり、この症例の低真空走査型電子顕微鏡(低真空SEM)での検討では、糸球体上皮細胞足突起の配列の乱れがあり上皮細胞体の球形変化も認められた。一方、ステロイド抵抗性から感受性に変化した症例の各抗体の染色性の低下は認められなかった。 昨年度の検討のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群では糸球体上皮細胞体の球形化の所見が多くの糸球体にみられていた所見と、本年度の結果とを考えると、低真空SEMで認められた糸球体上皮細胞体の球形化の所見は上皮細胞に存在するポドシンの発現に影響されうることが示唆された。ポドシンは遺伝性ネフローゼ症候群の原因でありその組織像は巣状糸球体硬化症を呈し、また、ポドシンの異常が尿蛋白の原因となることがわかっている。本年度の研究で、ポドシンの発現の変化と糸球体上皮細胞体の形態変化が関連していることを示したことは、上皮細胞体の形態変化が尿蛋白出現に原因となりうることを示唆し、このことから、本年度の結果は意義あるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネフローゼ症候群の腎組織について酵素抗体法により免疫染色を行った。その結果、α-アクチニン4、シナプトポジン、CD2APでは、ステロイド感受性ネフローゼ症候群とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群とでは差がなかったが、ポドシンについてはステロイド抵抗性群が感受性群より染色性が優位に低下していたことを示した。これはポドシンの発現と糸球体上皮細胞体の形態が関連している可能性を示唆するものであり、これは本研究において重要な知見と考えられる。この結果を元として次年度の研究に進むことができるため、当初の計画と比較して順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに糸球体上皮細胞体の形態変化と細胞骨格関連蛋白(α-アクチニン4,シナプトポジン,アクチン)、上皮細胞足突起スリット膜タンパク(ネフリン、ポドシン)との関連を示した。次年度は本研究の最終年度であり、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の中でも特に予後が不良である巣状分節性糸球体硬化症の早期診断指針作成を目指す。そのために、複数回腎生検を行った症例について上皮細胞の形態変化を低真空走査型電子顕微鏡(低真空SEM)で検討することにより臨床症状と腎組織の変化との関連を示す。 またその変化がネフローゼ症候群に特異的なものであるかを検討するためにIgA腎症などの慢性腎炎症例においても低真空SEMでの観察、免疫染色を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、研究の進行状況などにより外国旅費を使用することが出来なかったので次年度使用額が生じた。平成25年度に請求する研究費により、IgA腎症などの慢性腎炎症例に対する免疫染色を行うための抗体、各種試薬などを新たに購入する。また研究の打ち合わせ、情報収集、成果発表のために学会参加を行う予定である。
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