研究課題
難治性腎炎の進展阻止を図るための治療ターゲット分子の同定と治療法の開発が本研究の目的である。予後改善をもたらす新たな治療法の開発は、小児医療の領域で極めて重要な課題である。我々は、腎炎進展時に誘導される多くの遺伝子の中から糸球体内皮細胞(GEC)障害に関わる分子をDNAアレイ解析より検索しアンジオポエチン様因子4 (ANGPTL4)を同定した。本年度は代表的腎炎進展因子、アンジオテンシンII (Ang II)やその発現のベースとなる糸球体レニンアンジオテンシン系(RAS)活性状態とGECが発現するANGPTL4との関係を検討した。進行性腎炎モデルでは糸球体RAS成分(アンジオテンシノーゲン、Ang II)が亢進しており、内皮細胞ANGPTL4発現も増加していた。Ang II作用を阻害する拮抗薬(ARB)で腎炎を治療すると、尿所見や腎炎組織像の改善だけでなくANGPTL4の遺伝子および蛋白発現レベルで改善が得られた。ANGPTL4が血管新生や透過性に関わっていることから、培養ヒトGEC(Bristol大学Peter Mathieson教授より供与)を用いてRASとANGPTL4の関連性とANGPTL4発現誘導するシグナル経路を検討している(特にp63を含む経路を探索している)。本研究の成果は腎炎進行の基盤となるGEC障害でのANGPTL4の役割を解明する上で重要であり、GEC障害阻止に基づく腎炎の新規治療法の開発の端緒となる可能性がある。
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