研究課題/領域番号 |
23591571
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
近藤 秀治 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00380080)
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研究分担者 |
香美 祥二 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00224337)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | CAKUT / 活性酸素 / NADPHオキシダーゼ / 尿管芽分岐 / ネフロン形成 |
研究概要 |
本研究の目的は、先天性腎尿路奇形 (CAKUT)の病態に密接に関わる尿管芽分岐やネフロン形成という腎発生の基本的現象と増殖、遊走などの細胞機能が接着関連分子やNADPHオキシダーゼ由来活性酸素(ROS)により直接的、又はROSー接着関連分子シグナル伝達のクロストークにより間接的に制御されているかを検討することである。平成23年度は器官培養を用いて、ROSの産生とその産生機構であるNADPHオキシダーゼが尿管芽分岐やネフロン形成に関わっているかを明らかにすることに焦点をあてて研究を進めた。第一に、ラット胎児より胎生13-14日の腎臓を摘出し器官培養を行いROSや接着分子の役割を検討した。ROS抑制に抗酸化剤NADPHオキシダーゼ阻害剤を用いて検討したところ、尿管芽の分岐やネフロン形成が抑制された。これには、リン酸化MAPキナーゼなどの増殖、遊走のシグナル分子とcaspase3などにより誘導されるアポトーシスが関わっていることが判明した。さらに、増殖や遊走が活性化している部位では、NADPHオキシダーゼの発現とROS産生が亢進していることも明らかとなった。同時に、尿管芽分岐とネフロン形成に関わる増殖、遊走など細胞機能に接着分子が果たす役割を調べたところ、FAKとパキシリンのリン酸化シグナルが重要であることも判明した。これらの結果から、接着関連分子やNADPHオキシダーゼ由来ROSは密接に関連している可能性が推測された。現在、NADPHオキシダーゼ-ROSシグナル解析についてNADPHオキシダーゼ及びROS阻害によるMAPキナーゼ、PI3K-Akt経路などについて検索しており、ROSの腎発生に関わる直接的シグナル経路と接着関連分子とのクロストークを介する間接的シグナル経路を追跡している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、器官培養を用いて、ROSとROS産生機構NADPHオキシダーゼの発現が尿管芽分岐やネフロン形成に関わっているかを焦点をあてて研究を行った。 実際には、当初の計画どおりラット胎児より胎生13-14日及び胎生18日の腎臓を摘出し器官培養による研究を進めた。我々の仮説どおり、NADPHオキシダーゼ阻害剤では尿管芽の分岐やネフロン形成が抑制された。この抑制機序には、リン酸化MAPキナーゼなどの増殖、遊走のシグナル分子とアポトーシスを誘導するcaspase3が関わっていることが判明した。さらに、増殖や遊走が活発に行われる部位では、NADPHオキシダーゼ由来のROS産生が亢進していることも明らかとなった。次に、尿管芽分岐とネフロン形成に細胞接着分子の発現とリン酸化が関与するかを調べたところ、FAKとパキシリンのリン酸化シグナルが重要であり、これが腎発生で増殖、遊走などに関与する可能性があることも判明した。これらの成果から、接着関連分子やNADPHオキシダーゼ由来ROSは密接に関連している可能性が推測された。以上の成果の一部は、平成24年4月末にボストンで開催される米国小児科学会で口演発表として採択された。初年度の研究成果を国際発表の形にすることが可能になったことは、研究初年度の計画の進むべき方向性としては、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はROSの腎発生に関わる直接的シグナル経路と接着関連分子とのクロストークを介する間接的シグナル経路を調べることであるが、平成23年度から引き続きNADPHオキシダーゼ-ROSシグナル解析についてNADPHオキシダーゼ阻害によるMAPキナーゼ、PI3K-Akt経路など接着分子との共通シグナル経路についてさらなる探索を行っている。今後これらの成果がヒトの低形成腎やCAKUTなどの腎発生異常にどのように関わるのかを明らかにすることを計画している。具体的には、ヒトのCAKUTの組織や実験動物などを用いて接着関連分子やNADPHオキシダーゼ由来ROSのシグナル伝達がCAKUTの発症及び進展にいかに関与するかを研究する。さらに、尿管芽分岐やネフロン形成へのNADPHオキシダーゼ由来ROSの関与を、NADPHオキシダーゼ(NADPH oxidase;Nox)の遺伝子欠損マウスを用いて検討する方向で検討している。これらの分子細胞学的手法を用いて、腎発生を左右する増殖や遊走などのメカニズムに関して、シグナル分子としてのROSの直接的な作用と接着関連分子を介する間接的な作用を明らかにした後、尿管芽分岐やネフロン形成の異常から生じてくるCAKUTの発症と進展におけるROSの役割を解明することで、現在治療困難とされるCAKUTの治療法開発へすすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は平成23年度から継続しているNADPHオキシダーゼ-ROSシグナル解析についてNADPHオキシダーゼ阻害による接着分子の共通シグナル経路についての研究の整理を行う。続いて、接着関連分子やNADPHオキシダーゼ由来ROSのシグナル伝達異常がCAKUTの発症及び進展にいかに関わっているかを調べる。 NADPHオキシダーゼ-ROSシグナル解析に関しては、阻害剤、遺伝子発現制御などに関わる試薬、siRNA関連試薬の購入、MAPキナーゼ、PI3K-Akt経路などシグナル関連物質の抗体など消耗品を中心に購入を計画している。 また、CAKUTの病態に接着分子、NADPHオキシダーゼの発現やROS産生が関与しているかを調べるため、in vivoやex vivoで測定できるシステムを確立追加する。ROS (スーパーオキシド)測定 (in situアッセイ、電子スピン共鳴法など)を行うことで病態と細胞接着分子やNADPHオキシダーゼ由来ROSの役割とこれらのシグナル機構の関わりを検討する。これらのROS測定に関するシステムの確立に研究費の一部を使用することを検討している。
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