研究課題
慢性活動性 EB ウイルス感染症や EB ウイルス関連血球貪食症候群などの小児の難治性感染症に対して新たな治療法の開発が求められている。本研究では、動物モデルを用いて免疫遺伝子治療の開発を計画した。本研究では、新たな免疫不全マウスにヒト造血幹細胞を移植しヒト免疫系を再構築し、このヒト免疫系再構築マウスを用いてこれまで不可能であった難知性ウイルス感染に対する新たな治療開発小動物モデルを確立する。造血幹細胞を移植した免疫不全マウスでは、従来のマウス由来血球を持つマウスを用いた方法とは異なり、EBウイルスを構築されたヒト由来血球系に感染させることが可能である。TCR遺伝子導入自己造血幹細胞移植によって難治性ウイルス感染症の治療開発を行う研究計画である。23年度は ヒトのEB ウイルス特異的CD4, CD8細胞の樹立を行った。健常者から末梢血単核球を分離し、自己から誘導したAuto-LCLを用いてMix lymphcyto reaction (MLR) を行い、リンパ球を増殖させた。さらに MLR からMACS beads法により CD8 陽性分画と CD4 陽性分画をそれぞれ分離した。CD8 陽性リンパ球と CD4 陽性リンパ球に対しAuto-LCL を用いて MLR を行い増殖させ、Auto-LCL に対して Cr release assay を行った。その結果、EB ウイルス特異的ヒト CD4, CD8 は自己の LCL 株に対し細胞傷害活性を認め、自己の HLA によって提示された EB ウイルス由来の抗原に反応していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究に不可欠であるEBウイルス特異的ヒト CD4, CD8の樹立は順調に行われている。研究に必要な精度と再現性を確認するための基礎実験に時間を必要としているが、現在までの到達度としてはおおむね予定通りである。
造血幹細胞を移植した免疫不全マウスでは、従来のマウス由来血球を持つマウスを用いた方法とは異なり、EBウイルスを構築されたヒト由来血球系に感染させることが可能である。この方法を利用して血球貪食症候群の動物モデルマウスを確立することが目的である。このEBV-HLHモデルマウスを確立することが出来れば、この疾患の病態理解や治療開発においてきわめて有用である。24年以降は、樹立した細胞株を用いHLA-A24拘束性に抗ウイルス性CTLの誘導することのできる9-merペプチドエピトープを同定する。SH2D1A遺伝子またはBIRC4遺伝子をノックダウンさせたヒト造血幹細胞をNOD/SCID/IL-2receptorγcahinnullマウスに移植させる。さらにそのマウスにEBウイルスを感染させることによりEBV-HLHの病態を確立したい。
24年度以降の研究費に関しては、引き続き細胞の培養やCr release assay、細胞解析、動物購入や遺伝子の解析に支出する。また、研究打ち合わせや成果の確認のための旅費として支出する。24年度以降の支出もおおむね当初計画の通りである。
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Pediatr Blood Cancer.
巻: 56 ページ: 110-115