研究課題/領域番号 |
23591573
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
藤枝 幹也 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (60209020)
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研究分担者 |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50263976)
村上 雅尚 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80571017)
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キーワード | ウイルス / 感染症 / 微生物 |
研究概要 |
慢性活動性EBウイルス感染症は小児に多くみられる予後不良の疾患である。これまでの慢性活動性EBウイルス感染症の研究では、疾患特異的細胞側遺伝子の解析データは十分に蓄積されているとは言えない。しかも従来の研究は細胞株を使ってのデータが多く、患者in vivoでの病態を正確に反映しているとは限らない。本研究では生体内に近い状態にある細胞側の遺伝子発現を解析し、慢性活動性EBウイルス感染症特異的に発現変化する遺伝子の同定を行なった。 慢性活動性EBウイルス感染症患者末梢血よりリンパ球を分離し、培養に供することなくRNAを抽出し、cDNAを合成した。遺伝子発現のプロファイリングはPCRアレイシステムを用いて行った。健常人の末梢血リンパ球、およびEBV感染リンパ芽球様細胞をコントロールとして用いた。PCRアレイで得られたデータはΔΔCt法により患者サンプルと対照コントロール群、および患者間での比較解析を行った。16倍以上の有意差が得られた遺伝子を慢性活動性EBウイルス感染症特異的候補遺伝子とした。以下の結果を得た。「発現亢進遺伝子」IL10、IL2、INHBA、FZD7、LRP5、IL2RA、SMO、FIGF,POFUT 「発現低下遺伝子」WNT11、NR4A2、MAP2K7、DLL これら遺伝子には、インターロイキン、Notchシグナル系、Wntシグナル系、c-fosなど癌遺伝子に関係するシグナル系、血管内皮細胞増殖因子に関係するシグナル系などに連係する遺伝子が含まれていた。これらPCRアレイの結果の確証を行い、慢性活動性EBウイルス感染症特異的遺伝子の同定にあたる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに慢性活動性EBウイルス感染症における細胞側遺伝子の発現についての報告は1報のみにとどまっていた。しかしそれは細胞株を使って得られたものであり、必ずしも患者in vivoでの病態を正確に反映しているとは言えなかった。 本研究では、慢性活動性EBウイルス感染症患者から得られたリンパ球から、培養に供することなく、慢性活動性EBウイルス感染症特異的に発現変化する候補遺伝子を同定することを目的にし、これまでに慢性活動性EBウイルス感染症特異的候補遺伝子を数種類同定した。 これまでの研究成果は、Journal of Medical Virologyに受理された。 以上を総合し、本研究は当初の計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
慢性活動性EBウイルス感染症の患者数は決して多くなく、大規模な研究を進めていくことに限界はあるが、本研究課題において現段階までに同定することができた本疾患特異的に発現する遺伝子が病態形成にどのように関与しているのかについて研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、遺伝子同定のための試薬等を中心に最低必要減の予算を執行し、若干の繰越金が発生した。 次年度は遺伝子検出関連試薬、プラスティック器具などの物品費、および成果発表のための国内旅費などに予算の計上を予定している。
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