研究課題/領域番号 |
23591574
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西 順一郎 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (40295241)
|
研究分担者 |
野村 裕一 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 准教授 (90237884)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 大腸菌 / 下痢原性大腸菌 / 腸管凝集性大腸菌 / ESBL |
研究概要 |
小児下痢症患児由来大腸菌における腸管凝集性大腸菌(EAEC)とESBL(基質拡張型βラクタマーゼ)産生菌の頻度を調べ、その関連性を検討した。2004年~2010年、鹿児島市の一般小児科外来で細菌性下痢症が疑われた小児から検出された大腸菌4,512株を対象として、下痢原性大腸菌の病原遺伝子とESBL遺伝子をmultiplex PCR法で検出し、シークエンス型別を行った。大腸菌4,512株中ESBL遺伝子は89株(2.0%) (CTX-M, 81; SHV, 8)から検出され、EAECは108株(2.4%)であった。EAEC株におけるESBL遺伝子の保有率は27.8%(30/108)であり、EAEC以外の大腸菌における頻度1.3% (59/4404)に比べて有意に高かった (OR 28.3, 95% CI 17.3-46.4) 。また、年次別ESBL遺伝子の検出頻度は、2004~2010年において1.2%から5.3%へ、EAECの検出頻度は2.0%から4.5%へ、ともに増加傾向が見られた。CTX-Mのシークエンス型は、CTX-M-14が多くみられた。EAECは、他の大腸菌に比べて極めて高い頻度でESBL遺伝子を保有しており、EAECがESBL遺伝子のリザーバ―となっている可能性が示唆された。平成23年度の成果は、特定の下痢原性大腸菌が薬剤耐性遺伝子の伝播に関与していることを示しており、大腸菌全体のパンゲノム解析を進めてゆく上で有意義な成果と考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下痢原性大腸菌の病原遺伝子の分子疫学解析については、2004~2010年分までの約4500株についてPCR検査を終了できており計画は順調に進んでいる。また薬剤耐性遺伝子についても、同様の菌株数についてESBL遺伝子の網羅的解析が終了している。研究計画にある新たな迅速検出法の開発については、分子疫学解析の結果を待って着手する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果により、EAECとESBL産生菌は両方とも年次的に増加傾向があることがわかっており、さらに対象株数を増やして検討を進める。24年度はこれらの解析に加えて、最近保有株が多いことがわかってきているCDT(細胞膨化致死毒素)遺伝子の分子疫学解析を進める予定である。また、腸管外病原性大腸菌である尿路病原性大腸菌の病原遺伝子についても解析し、下痢原性大腸菌との遺伝子学的関連性について検討する。検出遺伝子については遺伝子相互関係をみるために遺伝子配列を比較して系統解析を行う予定である。さらに、23年度の成果から、EAECが他の大腸菌へ薬剤耐性プラスミドを伝播しやすいことが推定されるため、そのメカニズムについても細菌学的に検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、予定していた2011年の収集株についての解析が時間不足により開始できなかったため、16万円の次年度繰越金が発生した。その費用を用いて、2011年の423株についてEAECとESBL産生菌の関連性を検討する。24年度の費用については、CDT遺伝子や尿路病原性大腸菌の解析用にPCR用の消耗品、さらに当大学の遺伝子実験施設で行うシークエンス用の消耗品に充てる予定である。その他に、培養細胞によるCDT毒素試験のためのHEp2細胞培養用の消耗品、プラスミド伝達実験用の消耗品の購入も予定している。
|