研究課題/領域番号 |
23591575
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
川崎 幸彦 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00305369)
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研究分担者 |
細矢 光亮 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80192318)
橋本 浩一 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50322342)
陶山 和秀 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (90423798)
鈴木 順造 福島県立医科大学, 看護学部, 教授 (20171217)
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キーワード | MRPマクロファージ / M2マクロファージ / CD204 / スキッドマウス / Thy-1腎炎 / 硬化性腎炎 / 糸球体再生 |
研究概要 |
[目的]私達は、慢性腎炎におけるマクロファージサブクラスの働きを解析するために、小児期発症慢性糸球体腎炎の代表的疾患であるIgA腎症における治療前後の臨床経過と腎生検組織を用いて、M1・M2マクロファージの浸潤度と臨床的パラメーター、腎組織硬化度と予後との関連性について検討した。 [対象]2003年以降当科に入院加療した重症型IgA腎症50症例を対象とし、その治療反応性から治療反応群(1群)と治療不能群(2群)にわけ、その初回および再腎生検組織を用い活性化マクロファージであるMyeloid-related protein(MRP)陽性マクロファージマーカーとM2マクロファージマーカーであるCD204を免疫染色し、その染色度と臨床症状や検査成績、検尿所見と腎生検組織における急性変化、慢性変化、硬化性病変の指標であるα―Smooth muscle actin(SMA)の染色性に関し比較検討した。 [結果]1)2群患児では1群患児と比較して、初回腎生検所見での糸球体内C3沈着度や再生検所見でのIgA沈着度が多く認められた。2)2群患児では1群患児と比較して再生検時の蛋白尿量や血清IgA濃度が高値であった。3)MRP陽性細胞や CD204陽性細胞の糸球体内や間質内浸潤が2群患児において多く認められた。4)糸球体内や間質内における活性化マクロファージやCD163陽性細胞の浸潤度は、慢性指数やα―SMA陽性細胞の浸潤度と正の相関性が認められた。 [結語]補体活性や糸球体内IgA沈着度が腎炎の進展に強く関連し、 特に間質内に浸潤した活性化マクロファージやM2マクロファージは、IgA腎症の活動性や腎組織の硬化性病変の進展と密接な関わりを有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの慢性糸球体腎炎における活性化マクロファージ(MRP8)、M2マクロファージ(CD204)の役割、特に疾患活動性や硬化性病変の進展への関与を明らかにすることができたので上記と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Thy-1腎炎、硬化性腎炎モデルラットや溶血性尿毒症性症候群(HUS)モデルマウスを作成し、一過性メサンギウム増殖性腎炎、糸球体障害性腎炎や腎炎進行性硬化性腎炎における経時的腎障害とその後の回復・再生過程におけるマクロファージサブクラスの役割とそれらを誘導する各種サイトカインやケモカインについて検討する。さらに、IgA腎症以外の慢性腎炎に関しても、炎症進展におけるマクロファージサブクラスの関連性について評価する。 1.作製したTh1腎炎と硬化性腎病変モデルおよびHUSモデルを、各々の腎組織変化を蛍光抗体法や光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いることで経時的に解析する。 2.特に蛍光抗体法では、マクロファージフェノタイプの浸潤の程度を検索し、これと組織学的急性変化や慢性変化および腎臓の硬化性病変の指標となるα-Smooth muscle actin、コラーゲンtype4、TNF-α、β-actinなどの染色性と比較する。 3.免疫染色によりMonocytes/macrophages (ED-a/CD68+), M1 macrophages (CCR7+)、M2macrophages (CD168+)を染色し、腎組織変化との関連性を明確にする。抗VEGF抗体、抗HFG抗体による染色性、アポトーシスとその局在と各種マクロファージとの関連性を検索する。 4.と殺時に採取した血液や腎臓の単離糸球体を用い、血清クレアチニン、アルブミン濃度や各種炎症性サイトカインや炎症抑制性サイトカインおよびケモカイン,HGFやVEGFの出現と経時的なM1 macrophages (CCR7+)、M2macrophages (CD168+)の比率についてFASCを使用して測定する。 5.各種糸球体腎炎発症時から経時的に末梢血単球を採取し、MRP8、CD204をターゲットにしたFACS解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.ラットとマウス購入および飼育費 2.M1、M2マクロファージの各種抗体に対する抗体購入 3.サイトカインプロファイリングキッド購入 4.腎組織の光顕、蛍光抗体法、電子顕微鏡検体処理費
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