研究課題/領域番号 |
23591579
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中村 明宏 京都府立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50313854)
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研究分担者 |
浜岡 建城 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60189602)
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キーワード | 川崎病 / 血管炎 / 自然抗体 / mannose binding lectin |
研究概要 |
私たちは川崎病血管炎の発症機序について、川崎病様血管炎を発症する動物モデルを用いて、特に免疫応答異常の観点から研究を進めている。本年度は、前年度に見いだされたIgM型自己抗体に加えて、自然免疫応答において重要な役割を担う代表的なパタン認識血漿蛋白質である、mannose binding lectin (MBL)がマウス川崎病様血管炎の発症機序に関与している事を示唆する新知見を得た。すなわち、1)カンジダ細胞壁成分投与によるマウス実験的血管炎の誘導に伴い血中のMBL-Aは斬増するが、MBL-Cは急速に減少し、血中MBL濃度と血管炎の関連性がマウスモデルにおいて示された。2) MBL-Cは血管炎好発部位に炎症の初期より沈着し、その発症過程での関与が示唆された。3)MBLとIgM, 補体成分の沈着部位に一致がみられ、血管炎発症あるいは進展過程においてレクチン経路を介した補体活性化が関与することが示唆された。4)プロテオミクスの手法により、MBLの主要な内在性標的としてHistone H3, H4およびミエロペルオキシダーゼ(MPO)を同定した。 集団遺伝学的解析や臨床研究からMBLと川崎病の関連性はこれまでにも議論があったが、川崎病の病態メカニズムにおけるMBLの役割はいまだあきらかでない。本年度の研究から、MBLはIgMと協同して補体経路を活性化し、血管炎の発症あるいは増悪過程に関与する可能性が示唆された。一方、MBLの内在性標的分子として同定されたHistoneおよびMPOは、好中球のバーストに起因するNeutrophils extracellular trap (NET)の主要構成分子であるが、NETは生体防御機構としての性質を有するとともに、内皮傷害はじめ一部の血管炎にも関与することも報告されている。本研究から、この内皮傷害の分子機序にMBLが関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に血管炎への関与が示されたMBLは、前年度に見いだしたIgM型自然抗体 と協同して補体経路活性化に働く蛋白質であり、前年度に示唆されていたマウス川崎病様血管炎への補体経路の関与の可能性はさらに強まった。また予想外の結果として、プロテオミクスによるMBLの標的分子の解析から、NETによる内皮傷害とMBLとの関係も新たに示された。NETは一部の血管炎との関連がすでに報告されており、川崎病血管炎発症進展におけるMBLの役割を考える上で重要な知見と考えている。 これらの結果をもとに、マウスモデルを用いた補体経路を標的とした治療実験の準備も開始しており、その成果についても本年度中には一定のまとまった結果が報告できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
IgMとMBLの協同による補体活性化と血管炎発症、増悪機序との関係をさらに精査して、その分子論的機序の全容を解明するとともに、補体経路を標的とした川崎病の新規治療法開発を想定して、マウスモデルを用いて補体経路阻害剤(MASP阻害ペプチド、C1エステラーゼ阻害剤など)による血管炎抑制効果について解析を進めることを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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