本年度は前年度に引き続きcandida albicans weter soluble fraction (CAWS)誘発川崎病様血管炎の発症に関与すると考えられるIgM型自己抗体の認識抗原に関する研究を実施した。前年度までに大動脈組織蛋白質の2次元電気泳動とCAWSを投与した血管炎発症マウスの抗血清を用いて、自己抗原の探索を進めた。その結果、自己抗原として多くのミトコンドリア蛋白質およびいくつかの細胞質蛋白質を、標的抗原候補として同定した。しかし、論文投稿時に実際に炎症部位に沈着するIgMがいかなる自己抗原を認識しているかについてはこれらの結果だけからは推察の域を出ないとの指摘をレビュアーより受けた。この点を解決するために、血管炎の見られる大動脈起始部を含む組織より抽出した蛋白質を試料として、抗IgM 抗体固相化磁気ビーズをもちいて、組織より直接、沈着した免疫複合体をアフィニティー精製することを試みた。私達の知りうる限り、このような試みはほとんど例がなく、実験に先立ち、至適な可溶化条件などについて予備的検討に多くの時間を費やした。陰性対照群および精製画分についてLC-MS/MSを用いた分析を行い、IgM自己抗体が認識していると考えられる複数の蛋白質を同定した。現在、これらの候補蛋白質についてwestern blottingおよび免疫組織化学的方法により検証実験を行っており、その結果を踏まえて、論文化する予定である。
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