研究課題/領域番号 |
23591580
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
中西 浩一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50336880)
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研究分担者 |
吉川 徳茂 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10158412)
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キーワード | 多発性嚢胞腎 / CPKマウス / ユビキチン・プロテアソーム / 上皮間葉移行(EMT) / 疾患特異的治療 |
研究概要 |
多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease、PKD)は、わが国で最も頻度が高い遺伝性疾患であり、慢性腎不全の主要な原因の一つである。常染色体優性(ADPKD)と常染色体劣性(ARPKD)がある。本研究の目的は、多発性嚢胞腎の複数の基本的病態生理におけるユビキチン・プロテアソーム蛋白分解機構(ubiquitin-proteasome system、UPS)の関与とその機序を解明し、それらを修飾することによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治療研究による効果の確認である。 <cpkマウスARPKDモデル> cpkマウスARPKDモデルは、藤田保健衛生大学疾患モデル教育研究センターから供与を受け既に当大学の動物実験施設において維持されている。cpkマウスおよび同腹のマウス(対照)を用いている。 <研究遂行の基本方法> 標的分子の発現を蛋白と遺伝子レベルで検討し、疾患進行に伴い対照と比較して蛋白レベルのみの低下をきたした分子にUPS関与が考えられ、それらの分子についてUPS関連分子群の検討によりUPSの関与とその機序を明らかにする。具体的には以下の実験を進めている。蛋白発現:免疫組織化学染色、ウエスタンブロッティング、リアルタイム PCR、蛋白分解の定量:in vitro degradation assay、ユビキチン化の定量:in vitro ubiquitination assay。 これまでのところ、嚢胞形成性尿細管上皮におけるTGF-βおよびSmad分子群(Smad2、Smad3)の病態解明が進んでおり、それらとubiquitin E3 ligase familyであるSmurf1、Smurf2などの関連を解析している。現在、cpkにおけるSmurf1亢進を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初以下の基本病態におけるUPSの関与を示すために着目する分子について、研究を計画していた。 【1】細胞分化の異常・上皮間葉移行(EMT)における検討 EMTの機序としてWnt系、Hedgehog系情報伝達の変化を想定している。Wnt系:Wnt群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。Hedgehog系:Hedgehog群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。 【2】増殖・細胞周期異常における検討 ErbB 系(EGFR 系): EGF,TGF-α,それらの受容体 EGFR/ErbB1、情報伝達下流分子群。サイクリン、およびその関連分子。 【3】腎間質線維化における検討 TGF-βおよびSmad分子群(Smad2、Smad3、Smad7) しかし、【3】のTGF-βおよびSmad系が線維化のみならず、嚢胞性尿細管上皮の間葉系形質発現に関与していることが明らかになり、増殖、分泌、線維化の全てに関与する可能性があり、その解析に時間を費やしている。すなわち、【3】のTGF-βおよびSmad系が【1】と【2】で検討する予定であった病態生理を含んでいる。研究全体としては着実に進行している。現在それらにおけるユビキチン・プロテアソーム蛋白分解機構の関与につき検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、以下のPKDにおける基本病態につき研究を遂行予定であるが、これまでの進捗状況から考えて、【3】が中心となると予測される。 【1】細胞分化の異常・上皮間葉移行(EMT)における検討 EMTの機序としてWnt系、Hedgehog系情報伝達の変化を想定している。Wnt系:Wnt群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。Hedgehog系:Hedgehog群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。 【2】増殖・細胞周期異常における検討 ErbB 系(EGFR 系): EGF,TGF-α,それらの受容体 EGFR/ErbB1、情報伝達下流分子群。サイクリン、およびその関連分子 【3】腎間質線維化における検討 TGF-βおよびSmad分子群(Smad2、Smad3、Smad7) また、最近のPKDにおける国内外の研究成果を考慮し、検討すべき基本病態の追加・変更を考慮する必要がある。具体的には、PKDにおける高血圧発症機序に関して上皮性ナトリウムイオンチャネル(ENaC、epithelial Na+ channel)の検討などを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、腎組織におけるタンパク発現と遺伝子発現の解析が主要な部分となる。タンパク発現検討に不可欠な組織切片の作成に経費が発生する。また、微量な蛋白の発現を微細構造の中で詳細に検討するために、プラスチックに組織を包埋する予定であるので、その薄切用に特殊なガラスナイフをマイクロトームにセッティングする必要がある。 電気泳動、免疫組織学的染色、各種ブロッティングなどの実験機器・器具が必要である。 種々の高価な抗体等が必要であり、また、分子生物学的実験試薬の種類も多く、その費用が発生する。 本研究の成果は画像により示される部分が多く、その作製のための費用が必要である。 本研究分野の成果は日進月歩であり、国内外において積極的に最新の知見を収集することにより、本研究の軌道を調節する必要があり、旅費が発生する。また、積極的に国内外の学会発表や英文誌への投稿を目指すため、その旅費や英文校正の費用が必要である。
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