研究課題
多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease、PKD)は、わが国で最も頻度が高い遺伝性疾患であり、慢性腎不全の主要な原因の一つである。常染色体優性(ADPKD)と常染色体劣性(ARPKD)がある。本研究の目的は、多発性嚢胞腎の複数の基本的病態生理におけるユビキチン・プロテアソーム蛋白分解機構(ubiquitin-proteasome system、UPS)の関与とその機序を解明し、それらを修飾することによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治療研究による効果の確認である。研究にはヒトARPKDモデルcpkマウスを用い、同腹健常マウスを対照とした。標的分子の発現を蛋白と遺伝子レベルで検討し、疾患進行に伴い対照と比較して蛋白レベルのみの低下をきたした分子にUPS関与が考えられ、それらの分子についてUPS関連分子群の検討によりUPSの関与とその機序を明らかにするため研究を遂行した。これまでのところ、私どもの研究では嚢胞形成性尿細管上皮におけるTGF-βおよびSmad3系の病態解明が進んでおり、cpkにおいてTGF-β/Smad3系は当初想定した単なる量的異常より質的異常を示し、JNK/CDK4を介した核内pSmad3L/C作用によるc-Mycの発現増強がみられ、pSmad3L/CがPKDの病態に重要な役割を担っている可能性が示唆されている。私どもはcpkマウスではubiquitin E3 ligase familyであるSmurf1、Smurf2が増加していることを確認しており、それらとTGF-β/Smad3系の質的異常の関与について、詳細な分子メカニズムを明らかにするための研究を進めてきた。Smurf1、Smurf2が関与する分子は多岐にわたり、種々の作用に影響を及ぼすと考えられ、更に検討すべき分子の増加が想定されている。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e81480
10.1371/journal.pone.0081480