研究課題
Caspase-3 (Casp3)阻害薬存在下で培養された後腎の尿管芽分岐数、サイズは減少しWnt11ノックアウト(KO)マウス腎に類似する。またCasp3は尿管芽分岐に重要なROCK1、β cateninをそれぞれ活性化、不活化する。そこでCasp3のWnt11シグナル伝達および尿管芽分岐における役割を検討した。創傷治癒アッセイにおいて創傷縁の尿管芽細胞のCasp3活性が増加し、Casp3阻害薬は創傷治癒を抑制した。Wnt11は尿管芽細胞のCasp3活性を増加したがアポトーシスはみられなかった。Wnt11によりROCK1活性の指標リン酸化MYPT1が増加、活性型β cateninが減少したが、Casp3阻害薬はこれを抑制した。尿管芽細胞の創傷治癒をWnt11は促進したが、ROCK1阻害薬、β cateninの上流酵素阻害薬はその効果を抑制した。Casp3 KOホモの糸球体数はヘテロに比し30%減少、胎生13日の尿管芽分岐数も減少していた。また胎生15日後腎のホモ接合体のリン酸化MYPT1発現は対照に比し減少、β cateninは増加していた。Casp3がWnt11の下流でROCK1、β cateninを介し尿管芽分岐を誘導する可能性が示唆された。母体低栄養および対照の胎生18日後腎のDNAメチル化をMeDIP-chip法により検討した。15911のプロモーター領域のうち7330領域が母体低栄養でのみメチル化されていた。メチル化により転写が制御されている可能性のある遺伝子のGOカテゴリーは多い順にシグナル伝達、転写、トランスポート、アポトーシス、発生であった。そのうち腎発生に関与する遺伝子のほとんどが尿細管分枝に重要であった(メチル化の多い順にPI3K、β catenin、アクチビンA受容体、ヘパリン結合EGF様成長因子、integrinβ4、HGFなど)。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の一つ、母体低栄養によるネフロン数減少におけるcaspase-3の役割の解明は順調に進んでいる。平成24年度は尿管芽分岐に重要な分子Wnt11の下流にcaspase-3が位置することをin vitroの系で明らかにした。エピジェネティクスの研究においても成果が得られた。ラットモデルのMeDIP-chip法による解析により、母体低栄養胎生18日後腎でメチル化されている遺伝子のほとんどが尿管芽分岐に関与することが明らかになった。
平成25年度は母体低栄養によるネフロン数減少がcaspase-3活性低下によることを明らかにするため、caspase-3ノックアウトマウスを母体低栄養にし、胎仔腎への影響をホモ接合体、ヘテロ接合体で比較検討する。母体低栄養によるDNAメチル化のメカニズムを解明するため、DNAメチル化を担う酵素DNMTの発現を母体低栄養腎で検討する。また器官培養系でDNMT阻害薬の効果を検討する。さらに腎発生各段階でのゲノムDNA全体のメチル化レベル、DNMT発現の変化をあわせ検討する。ネフロン数減少に対する治療として低栄養母体ヘのDNMT阻害薬投与を試みる。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。平成25年度の研究費は消耗品購入の他、機器使用、病理標本作製、旅費(発表のためのアメリカ腎臓学会出席)、登録料、論文投稿料、印刷費に使用する。
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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