研究概要 |
<Nrf2 KOマウスにおけるCyA腎障害の検討> 野生型マウス(WT)およびNrf2ノックアウトマウス(KO)に、コーン油(WT+veh群とKO+veh群)またはCyA(WT+CyA群とKO+CyA群)を腹腔内投与し、腎組織MDA定量、各種遺伝子発現を検討した。Nrf2の下流にある抗酸化防御因子であるHO-1, NQO1, GSTM1の遺伝子発現を検討したところ、CyA投与により発現増強したのはHO-1のみで、この発現増強はNrf2 KOマウスでは著明に抑制されたことから、Nrf2を介した現象であることが示された。腎繊維化は組織学的には顕著に出現しなかったが、繊維化の指標となるTGFb1は、WTではCyA投与の影響はほとんどなかったものの、KOではCyA投与により増強した。また、尿細管障害の指標となるKim1の発現はCyA投与で増強(平均24.8倍)し、KOでその傾向が強かった。腎の酸化ストレスの指標となる腎組織MDAは、WTではCyA投与による影響は軽微であったが、KOではCyA投与により有意に増加した(WT+veh群 0.056±0.007 vs. KO+CyA群 0.139±0.012 nmol/mg.prot)。 <Keap1 KDマウスにおけるCyA腎障害の検討> WTおよびKeap1ノックダウンマウス(KD)に、コーン油(WT+veh群とKD+veh群)またはCyA(WT+CyA群とKD+CyA群)を投与し、上記と同様の検討を行った。WTではGSTM1の発現増強は認めなかったが、KDではCyA投与により発現が増強しており、過剰なNrf2の存在が関与していると考えられた。KD+CyA群ではHO-1のみならずGSTM1の発現も増強し、抗酸化防御機構が十分に作動することから、腎障害の軽減を予測したが、腎TGFb1、Kim1の発現はバラツキが大きく有意差はなく、むしろ一部のマウスでは増強されており、予測と反する結果であった。
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