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2012 年度 実施状況報告書

血管炎の急性期における血管平滑筋細胞の形質転換に伴う細胞機能・応答機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23591588
研究機関日本医科大学

研究代表者

小川 俊一  日本医科大学, 医学部, 教授 (50194436)

研究分担者 勝部 康弘  日本医科大学, 医学部, 准教授 (20246523)
深澤 隆治  日本医科大学, 医学部, 准教授 (80277566)
キーワード川崎病
研究概要

本研究は川崎病類似の血管炎動物モデルを用いて、血管炎に伴い形質転換することが予測される血管平滑筋細胞の細胞機能、応答機構を免疫組織学的方法、分子生物学的方法、微小電気生理学的等を用いて解明し、さらにその結果を受けて、この系における治療戦略についても検討することにある。Candida Albicans Water Soluble Fraction(CAWS)による動脈炎モデルマウスの遺伝子パターンは我々が川崎病症例で見出したパターンと極めて類似する所見であることから、川崎病類似血管炎モデルになると判断し以下の実験を行った。
[研究方法]4-5週齢のDBA/2マウスにCAWS 0.5mgを連日5日間腹腔内投与し血管炎を生じさせる(CAWS群)。CAWSの代わりに生食を5日間連続腹腔内投与を行った群をコントロール(Cont群)とした。CAWS投与後2週間で屠殺、CAWS群およびCont群の2群間のに大動脈基部組織所見、および2群より採取した大動脈基部組織を用いて免疫組織染色を行い、血管平滑筋細胞の形質転換について検討を行った。
[結果] 1)組織学的検索:CAWS群では全例において大動脈のバルサルバから左右冠動脈分岐部にかけて強い血管炎を呈していた。2)血管平滑筋細胞が形質転換する過程に関与すると考えられる転写因子(KLF5, Erg-1)およびM-CSFの受容体であるM-CSFRの発現を比較検討したが、CAWS群ではCont群に比して有意にこれら転写因子、受容体の発現が亢進していた。
[考案]この系ではKLF5やErg-1と言った転写因子およびM-CSF(川崎病の患者で血管炎の極期に有意に上昇しており、単球からマクロファージへの転換を促進している)の受容体の発現が有意に増加しており、血管炎に伴い分化型から脱分化型に平滑筋細胞が形質転換していることを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成24年度の目標はCAWSによる川崎病類似血管炎モデルマウスを完成し、血管平滑筋細胞が血管炎に伴い分化型から脱分化型に形質転換する系を免疫組織学的、ならびに単離血管平滑筋細胞を用いてのパッチクランプ法による微小電気生理学的に解明することにあった。しかし、免疫組織学的検索にとどまり、微小電気生理学的方法による解析にまで至っていない。ただし、モデルマウスを効率よく作成することが可能となり、そこからの血管平滑筋細胞の単離も可能となったので、平成25年度には現在の遅れを取り戻し、本研究を完結することが十分に可能と考える。

今後の研究の推進方策

CAWSによる川崎病類似血管炎モデルマウスを用いて以下の実験を行う。
1) 血管平滑筋細胞の単離、および各培養細胞の作成:大動脈基部組織より単離した血管平滑筋細胞を作成する。デイッシュ内に細胞数が1x 100000個/mlになるように調整し培養液と共に37℃、95%O2, 5%CO2下にて培養する。2) 血管平滑筋細胞に対する微小電気生理学的検討:CAWS群およびCont群の動脈組織より得られた単離血管平滑筋細胞に対してパッチクランプ法を用いてwhole cell 膜電位依存性CaチャンネルおよびKチャンネル 電流の測定を行う。3) 各培養細胞よりのmRNAの抽出:血管炎が惹起された血管平滑筋細胞および対照の血管平滑筋細胞の培養細胞よりmRNAを抽出する。4) DNAチップによる網 羅的遺伝子発現の評価:DNAチップおよびDNAプロファイリング解析装置を用いて各種培養平滑筋細胞に発現するシグナルを検討する。5)定量PCRによる遺伝子発現量の検討:遺伝子プロファイリング解析の結果から発現の変動が確認された遺伝子についてはプローブを用いて TaqMan PCRにより定量PCRを行い、遺伝子発現を定量する。6)ARB(AngiotensionIIreceptor blocker)による血管平滑筋細胞の形質転換阻止効果の判定:CAWS 1mg/mouseおよび生食を腹腔内に投与した4-5週齢のDBA/2系マウスに対して、ARB 0.2μg/g(マウス体重)および2μg/gの経口内服を行い血管平滑筋細胞の形質転換阻止効果を検討する。ARBはCAWSの腹腔内投与と同時または投与終了直後より開始し、屠殺直前まで継続する。屠殺後に上記免疫組織学的、微小電気生理学的、分子生物学的検討を行い、ARBによる血管平滑筋細胞の形質転換阻止効果を検討る。

次年度の研究費の使用計画

実験を遂行するための設備については新たな購入をしなくても現状で十分対応できると考える。
研究費の中で一番占める割合が大きいのは実験動物費であり、約30%を占める予定である。その他、薬品・試薬代、実験器具代、消耗品各種代、各種抗体およびプローブの作成料、定量PCRキットが約50%。学会での報告および調査に関わる費用が約20%と推定している。

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] 血管炎ー基礎と臨床のクロストークー III. 川崎病の原因・病理、診断・治療 「川崎病の診断」2013

    • 著者名/発表者名
      小川俊一
    • 雑誌名

      日本臨床

      巻: 71 ページ: 125,131

  • [雑誌論文] A genome-wide association study identifies three new risk loci for Kawasaki disease2012

    • 著者名/発表者名
      Onouchi Y、Ozaki K、Burns JC、Ogawa S、他
    • 雑誌名

      Nature Genetics

      巻: 44巻 ページ: 517-522

    • DOI

      10.1038/ng.2220

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 小児における冠攣縮性狭心症に対する侵襲的検査法の重要性と問題点2012

    • 著者名/発表者名
      小川俊一
    • 雑誌名

      日本小児循環器学会雑誌

      巻: 28 ページ: 65,66

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 冠循環生理の基本と川崎病後遺症の各病型における冠循環動態2012

    • 著者名/発表者名
      小川俊一
    • 雑誌名

      日本小児循環器学会雑誌

      巻: 28 ページ: 117,125

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 循環器疾患診療ツールとしてのバイオマーカー「小児循環器疾患」2012

    • 著者名/発表者名
      勝部康弘、小川俊一
    • 雑誌名

      Heart View

      巻: 16 ページ: :96,102

  • [雑誌論文] 川崎病のup to date 冠動脈病変治療の進歩2012

    • 著者名/発表者名
      小川俊一
    • 雑誌名

      小児科

      巻: 53 ページ: 1795,1801

  • [雑誌論文] Efficacy of immunoglobulin plus predonisolone for prevention of coronary artery abnormalities in severe Kawasaki disease (RAISE study): a randomised, open-label, blinded-endpoints trial2012

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi T, Saji T, Otani T, Takeuchi K, Nakamura T, Arakawa H, Kato T, Hara T, Hamaoka K, Ogawa S,et al.
    • 雑誌名

      Lancet

      巻: 379 ページ: 1613,1620

    • DOI

      10.1016/S0140-6736(11)61930-2

    • 査読あり
  • [学会発表] 血管炎のバイオマーカー、ペントラキシン3の川崎病への応用2012

    • 著者名/発表者名
      勝部康弘、赤尾見春、上砂光裕、阿部正徳、池上英、橋本康司、渡邉誠、林美雪、深澤隆治、小川俊一
    • 学会等名
      第32回日本川崎病学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] 川崎病患者に対するInfliximab使用実態調査20112012

    • 著者名/発表者名
      佐地勉、小林徹、高月晋一、薗部友良、荻野廣太郎、小川俊一、濱岡建城
    • 学会等名
      第32回日本川崎病学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] 最近10年間における川崎病巨大冠動脈瘤の実態全国調査2012

    • 著者名/発表者名
      深澤隆治、濱岡建城、佐地勉、小川俊一、その他
    • 学会等名
      第32回日本川崎病学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] 遠隔期冠動脈壁異常、成人期急性冠症候群発症例から見た川崎病冠後遺症の予後2012

    • 著者名/発表者名
      三谷義英、津田悦子、賀藤均、小川俊一、その他
    • 学会等名
      第32回日本川崎病学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] 冠動脈バイパス術を施行した川崎病巨大冠動脈瘤におけるV1~V4の陰性T波残存は予後と関連するか2012

    • 著者名/発表者名
      林美雪、橋本康司、渡邉誠、阿部正徳、赤尾見春、池上英、大久保隆志、上砂光裕、勝部康弘、小川俊一
    • 学会等名
      第32回日本川崎病学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] 冠動脈バイパス術ご10年以上経過した巨大冠動脈瘤合併川崎病の2例2012

    • 著者名/発表者名
      上砂光裕、勝部康弘、赤尾見春、渡邉誠、阿部正徳、池上英、大久保隆志、深澤隆治、小川俊一、落雅美
    • 学会等名
      第32回日本川崎病学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] 「川崎病冠動脈病変の変遷:その機序と対応」2012

    • 著者名/発表者名
      小川俊一
    • 学会等名
      第60回日本心臓病学会学術集会
    • 発表場所
      金澤
    • 年月日
      20120914-20120916
    • 招待講演
  • [学会発表] Biomechanical factorsによる冠循環動態の評価2012

    • 著者名/発表者名
      渡邉誠、深澤隆治、大久保隆志、橋本康司、阿部正徳、林美雪、赤尾見春、池上英、上砂光裕、勝部康弘、小川俊一
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] 川崎病既往成人における急性冠症候群:これからの診療体制の構築に向けて2012

    • 著者名/発表者名
      三谷義英、津田悦子、賀藤均、小川俊一、中村好一、高橋啓、その他
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] 重症川崎病患者に対する免疫グロブリン・プレドニゾロン初期併用投与(RAISE STUDY)の有用性2012

    • 著者名/発表者名
      小林徹、佐地勉、荒川浩一、加藤太一、原寿郎、濱岡建城、小川俊一、その他
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] 川崎病モデルマウス遺伝子解析による川崎病発症機構の解明2012

    • 著者名/発表者名
      深澤隆治、大野尚仁、三浦典子、渡邉誠、阿部正徳、林美雪、池上英、橋本康司、小川俊一
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] 川崎病後巨大冠動脈瘤症例における心電図変化と病態・臨床像の検討2012

    • 著者名/発表者名
      林美雪、深澤隆治、橋本康司、渡邉誠、阿部正徳、赤尾見春、池上英、大久保隆志、上砂光裕、勝部康弘、小川俊一
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] 川崎病冠動脈瘤部位での動脈硬化マーカーの検討2012

    • 著者名/発表者名
      池上英、小川俊一、勝部康弘、深澤隆治、上砂光裕、大久保隆志、赤尾見春、阿部正徳、林美雪、渡邉誠、鈴木伸子
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] CABG術後10年以上経過した川崎病後冠動脈障害合併患者の予後の評価2012

    • 著者名/発表者名
      橋本康司、渡邉誠、阿部正徳、林美雪、池上英、大久保隆志、上砂光裕、深澤隆治、勝部康弘、小川俊一
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] 左冠動脈瘤直下の心筋梗塞と穿通枝の関与2012

    • 著者名/発表者名
      阿部正徳、渡邉誠、林美雪、鈴木伸子、池上英、大久保隆志。上砂光裕、赤尾見春、勝部康弘、深澤隆治、小川俊一
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120707
  • [学会発表] 川崎病発症から半年後までの心機能とバイオマーカーの推移2012

    • 著者名/発表者名
      赤尾見春、勝部康弘、上砂光裕、鈴木伸子、渡邉誠、阿部正徳、林美雪、池上英、深澤隆治、小川俊一
    • 学会等名
      第48回日本小児循環器学会学術集会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120705-20120705
  • [学会発表] Current advances in Kawasaki disease (Symposium) " Sequelae of Kawasaki disease in young adults"2012

    • 著者名/発表者名
      Shunichi Ogawa
    • 学会等名
      World Congress of Cardiology 2012
    • 発表場所
      Dubai, UAE
    • 年月日
      20120418-20120420
    • 招待講演
  • [学会発表] 「レオロジーから見た冠動脈病変の評価」

    • 著者名/発表者名
      小川俊一
    • 学会等名
      第8回岡山川崎病研究会
    • 発表場所
      岡山
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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