研究課題
本研究の主題は川崎病類似の血管炎動物モデルを用い、炎症に伴い形質転換した血管平滑筋細胞の細胞機能、応答機構およびそれらの機序を微小電気生理学的、免疫組織学的、分子生物学的方法等を用いて解明し、この系における治療戦略についても検討することにある。Candida Albicans Water Soluble Fraction(CAWS)による動脈炎モデルマウスの遺伝子パターンは我々が川崎病症例で見出したパターンと極めて類似する所見であることから、川崎病類似血管炎モデルになると判断し以下の実験を行った。[研究方法]4-5週齢のDBA/2マウスにCAWS 0.5mgを連日5日間腹腔内投与し血管炎を生じさせる(CAWS群)。CAWSの代わりに生食を5日間連続腹腔内投与を行った群をコントロール(Cont群)とした。CAWS投与後2週間で屠殺、CAWS群およびCont群の2群間のに大動脈基部組織所見、および血液白血球での遺伝子プロファイリングの比較を行った。さらに、血管平滑筋細胞の形質転換に関与することが予想される転写因子KLF5、Erg-1の発現を検討し、最後に血管平滑筋細胞の形質転換に伴う膜電位依存性Caチャンネルの変化を検討した。[最終年度の成果]脱分化型平滑筋細胞ではKLF5およびErg-1の発現が分化型血管平滑筋細胞に比し有意に高値を呈していた。一方、分化型および脱分化型血管平滑筋細胞の膜電位依存症Caチャンネルの検討では有意差は認められなかった。これは、炎症をおこした血管平滑筋細胞を単離する際に脱分化型平滑筋細胞中に分化型平滑筋細胞が混入していた可能性があり、個々の細胞レベルでの検討では有意差が出なかった可能性が示唆される。
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