研究課題
【目的】Small-for-gestational age(SGA)児の中枢神経障害については、その予防法・治療法が確立されていない。本研究においてはSGA児におけるに対する成長ホルモン(GH)療法が発達過程の中枢神経系に及ぼす影響を検討し、重症SGA児が抱える成長障害と発達障害の双方を回避できる治療方法を確立する基礎的データを提供することを目的とする。【方法】本年度は、SGAモデルラットの行動評価および中枢神経組織学的評価を計画した。具体的には行動評価として日齢21~22にロータロッド、日齢32~34にオープンフィールド、日齢39~42にシャトルアボイダンスをおこなった。中枢神経組織学的評価として日齢48に海馬および皮質のNeuNによる免疫組織学的評価をおこなった。【結果】SGAラットでは2日目のロータロッドで落下までの時間が対照群に比して有意に短かった。オープンフィールドにおいてもTotal movement distanceが有意に短く、Center area entriesも有意に少なかった。シャトルアボイダンスでは回避率は有意差を認めなかったが、回避潜時はSGAラットで有意に延長していた。免疫組織学的検討では、海馬においては体積および細胞数は差は認めなかったが、細胞密度はSGAラットで有意に少なかった。皮質においては体積、細胞数、細胞密度の差を認めなかった。【考察および結論】SGAラットの行動評価を行ったところSGAラットでは学習能力が劣っていること、活動性が低いことが示唆された。これらの所見は海馬における細胞密度が減少している所見から説明することが可能であった。来年度以降はGH投与をおこなった群における行動評価をおこない、併せて中枢神経における組織学的・分子生物学的変化の検討を予定する。
3: やや遅れている
研究が若干遅延した理由として、行動評価の系の立ち上げに時間を費やしたこと、組織学的検討の安定に時間を費やしたことがあげられる。
1)組織学的検討として、Luxol-fast blue染色、proteolipid protein抗体、myeline basic protein抗体を用いた免疫組織化学検査にて脳の髄鞘化の程度を評価する。胎児期あるいは出生直後に5-bromo-2-deoxyuridine(BrdU)を腹腔内投与し、神経細胞遊走を評価する。神経新生:海馬歯状回顆粒細胞下層、脳室下帯の神経新生を評価する。血管新生:免疫組織学的に血管新生を評価する。2)分子生物学的検討として、脳組織における神経栄養因子(BDNF, NT3, neurotropins, nerve growth factor等)の発現について評価する。3)GH療法の安全性の検討と用量用法の決定として、高用量群(2.5μg/kg/日)、低用量群(1.0μg/kg/日)で検討をおこない、GH、IGF-I、IGFBP、血糖値、ヘモグロビンA1c、甲状腺機能などを検査して安全性を確認する。
平成25度の研究費の使用計画は下記である。1)モデル動物に関する費用として、SD系ラット(150千円)、ラット飼育料(100千円)2)試薬等に関する費用として、合成成長ホルモン(100千円)、中枢神経免疫組織検討に使用する抗体等(200千円)3)旅費に関する費用として、国内学会出張(100千円)、打合せ会(50千円)4)その他の費用として、研究補助員への謝金(250千円)報告書作成(50千円)
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