研究概要 |
本研究は、脳発達におけるセロトニン(5-HT)の役割を明らかにするため、5-HT神経系の発達障害が生じることが明らかとなっている胎生期エタノール曝露ラットを用いた検討を行うものである。平成23年度は、胎生期に5-HT1A受容体を介したシグナル伝達を、5-HT1A受容体アゴニストを投与することで増強すると、胎生期エタノール曝露により生じる5-HT神経細胞数の減少を軽減できることを明らかにした。平成24年度には、同様の検討を5-HT2A/2C受容体アゴニストである1-(2,5-dimethoxy-4-iodophenyl)-2-aminopropane (DOI)行い、胎生期の5-HT2A/2C受容体を介したシグナルもまた、胎生期エタノール曝露ラットにおける5-HT神経細胞数の減少を軽減すること明らかにした。平成25年度は、この5-HT2A/2C受容体アゴニストによる5-HT神経細胞数の減少抑制効果の詳細を検討するため、DOI投与によるセロトニン発達関連遺伝子の発現変化を検討した。その結果、胎生19日における脳内phox2bの発現量は胎生期エタノール曝露により減少するが、胎生13-19日にDOIを投与するとその減少が生じないことが明らかとなった。また、これまで5-HT1A受容体を介したシグナルが5-HT神経系の発達において重要な役割を果たすことが報告されてきたが、5-HT2Aおよび2C受容体については不明であるため、胎生期にそれぞれの受容体のアンタゴニストを投与することで、5-HT神経系の発達に変化が生じるかどうか検討した。その結果、胎生13~18日に5-HT2C受容体アンタゴニストを投与しても中脳縫線核における5-HT神経細胞数に変化は生じないことが明らかとなった。さらに5-HT2Aアンタゴニトについても同様の投与を行い、現在5-HT神経細胞数の計測を行っているところである。
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