• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

新生児皮下脂肪壊死症は褐色脂肪組織のアポトーシスにより生じる

研究課題

研究課題/領域番号 23591598
研究機関大分大学

研究代表者

藤原 作平  大分大学, 医学部, 教授 (90181411)

研究分担者 岡本 修  大分大学, 医学部, 講師 (40284799)
石川 一志  大分大学, 医学部, 助教 (80600452)
キーワード褐色脂肪組織 / 新生児皮下脂肪壊死症 / ミトコンドリア / UCP-1 / アポトーシス
研究概要

新生児皮下脂肪壊死症は、仮死、低酸素血症、低体温、出生時の外傷などを契機に、生後1-3週間以内に生じ、上背部、頚部、上腕、腋窩、臀部などに好発する。この疾患になぜ好発部位が存在するのか? なぜ成人の脂肪壊死病変には見られない特徴的な病理組織像をとるのか? という疑問を考察するうちに、この好発部位は新生児期の褐色脂肪組織の解剖学的分布と一致することに気付いた。褐色脂肪組織とは、分娩時に胎児が母体の暖かい環境から離れて外界の低温環境に曝露される際に、多量の熱産生が必要となるが、その際の非ふるえ熱産生と呼ばれる現象をつかさどる組織である。新生児期では、上背部、頚部、上腕、腋窩などに豊富に存在するが、成人になるにつれて、次第に退縮していき、頚部、心臓、大動脈・腎周囲にのみ残存すると言われる。通常の白色脂肪組織とは異なり、1個の細胞内に小さい脂肪滴が多数あり、その脂肪滴の間に網の目状にミトコンドリアが豊富に存在する。ミトコンドリアの膜上には、UCP-1(uncoupling protein 1)と呼ばれる蛋白質が存在し、酸化時にATPを産生せず、熱を産生するのに寄与している。
そこで、新生児皮下脂肪壊死症は褐色脂肪細胞の変性であるとの仮説を立てて、病理組織標本のUCP-1染色を行なった。1-2個のUCP-1染色陽性の細胞が認められた。また電子顕微鏡標本でも小さい脂肪滴とミトコンドリアを有する変性過程の褐色脂肪細胞と思われる細胞が多数認められた(Dermatol、2011;223:207-210)。さらに我々は、患児の18FDG(18F-fluorodeoxyglucose)PET-CTを用いて、 18FDGの病変部への取込みを測定し、その低下を認めた。これは病変部の褐色脂肪組織の減少を示唆した。以上の結果から、新生児皮下脂肪壊死症の病変の主座は褐色脂肪組織であると推論した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

マクロファージの型を調べるべく、抗マクロファージマンノース受容体抗体(抗CD206抗体)やオステオポンチンで染色を試みたが、成功しなかった。PET-CT撮影装置は、2011年秋本学に設置されたが、対照となる、新生児の18FDG PET-CTの撮影対象者はなかなか見出せない。また腎摘出患者から、褐色脂肪の分離を試みたが、白色脂肪組織のみであった。本疾患の最近の症例報告は少なく、材料が入手可能な患者さんが少ない。

今後の研究の推進方策

予定を変更して、下記の項目について重点的に研究を行う。(1)新生児皮下脂肪壊死症患者について細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるadipose triglyceride lipase (ATGL)の遺伝子変異の有無について確認する。ATGL遺伝子の欠損変異は、2008年平野賢一らが、心筋、冠動脈に中性脂肪が蓄積する結果、重症心不全、不整脈、虚血性心疾患などを呈する難病として見出した中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TCGV) を惹起する。(2)ヒト褐色脂肪、ならびに褐色脂肪細胞の性状の検討1)腎臓摘出患者から、副腎周囲、あるいは大動脈周囲の褐色脂肪組織を分離し、全蛋白質、全RNAを抽出し、白色脂肪組織との違いを確認する。全RNAについては、UCP-1についてリアルタイムPCRを行う。2)ヒト前駆脂肪細胞にPRDM 16を導入し、褐色脂肪細胞に特異的遺伝子(UCP-1、Pgc-1α、CIDEA)が発現しているかどうかを確認する。3)2次元電気泳動を行い、1)のデータと比較する。4)上記細胞の全RNAを抽出しUCP-1についてリアルタイムPCRを行い、定量的測定を行う。(3)マウスの褐色脂肪の性状
1)(2) の1)と同様にマウスから、褐色脂肪組織を分離し、全蛋白質、全RNAを抽出し、2次元電気泳動を行い、白色脂肪組織との違いを確認する。全RNAについては、UCP-1についてリアルタイムPCRを行い、定量的測定を行う。(4)患者追跡調査、核、ミトコンドリア遺伝子保存 1)これまでの報告をもとに、全国の患者を集める。協力がえられれば、その家族も含めて患者の血液を採取し、核DNA、ミトコンドリアDNAを分離、保存する。

次年度の研究費の使用計画

マウス、ヒト前駆脂肪細胞、リアルタイムPCRキット、プライマーなどを含めた消耗品と調査費に使用したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] The Th2 cytokine, interleukin-4, abrogates the cohesion of normal stratum corneum in mice: implications for pathogenesis of atopic dermatitis.2013

    • 著者名/発表者名
      HatanoY, Adachi1 Y, Elias PM, Crumrine D, Sakai T, Kurahashi R, Katagiri1 K, Fujiwara S
    • 雑誌名

      Exp Dermatol

      巻: 22 ページ: 30-5

    • DOI

      10.1111/exd.12047.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transient expression of mouse pro-α3(V) collagen gene (Col5a3) in wound healing.2012

    • 著者名/発表者名
      Sumiyoshi H, Kitamura H, Matsuo N, Tatsukawa S, Ishikawa K, Okamoto O, Fujikura Y, Fujiwara S, Yoshioka H.
    • 雑誌名

      Connect Tissue Res.

      巻: 53 ページ: 313-7

    • DOI

      10.3109/03008207.2011.653061. Epub 2012 Feb 13.

    • 査読あり
  • [図書] Melanoma- From Early Detection to Treatment2013

    • 著者名/発表者名
      Kay Y, Fujiwara S
    • 総ページ数
      475-497
    • 出版者
      INTECH

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi