研究課題
新生児皮下脂肪壊死症は、仮死、低酸素血症、低体温、出生時の外傷などを契機に、生後1-3週間以内に生じ、上背部、頚部、上腕、腋窩、臀部などに好発する。この疾患の好発部位は新生児期の褐色脂肪組織の解剖学的分布と一致することに気付いた。褐色脂肪組織とは、分娩時に胎児が母体の暖かい環境から離れて外界の低温環境に曝露される際に、多量の熱産生が必要となるが、その際の非ふるえ熱産生と呼ばれる現象をつかさどる組織である。通常の白色脂肪組織とは異なり、1個の細胞内に小さい脂肪滴が多数あり、その脂肪滴の間に網の目状にミトコンドリアが豊富に存在する。ミトコンドリアの膜上には、UCP-1(uncoupling protein 1)と呼ばれる蛋白質が存在し、酸化時にATPを産生せず、熱を産生するのに寄与している。そこで、新生児皮下脂肪壊死症は褐色脂肪細胞の変性であるとの仮説を立てて、病理組織標本のUCP-1染色を行なった。1-2個のUCP-1染色陽性の細胞が認められた。また電子顕微鏡標本でも小さい脂肪滴とミトコンドリアを有する変性過程の褐色脂肪細胞と思われる細胞が多数認められた。さらに我々は、患児の18FDG(18F-fluorodeoxyglucose)PET-CTを用いて、 18FDGの病変部への取込みを測定し、その低下を認めた。これは病変部の褐色脂肪組織の減少を示唆した。以上の結果から、新生児皮下脂肪壊死症の病変の主座は褐色脂肪組織であると推論した。今後新生児皮下脂肪壊死症患者について細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるadipose triglyceride lipase (ATGL)の遺伝子変異の有無について確認する。ATGL遺伝子の欠損変異は、2008年平野賢一らが、心筋、冠動脈に中性脂肪が蓄積する結果、重症心不全、不整脈、虚血性心疾患などを呈する難病として見出した中性脂肪蓄積心筋血管症を惹起する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 図書 (1件)
J Invest Dermatol.
巻: 134 ページ: 256-63
10.1038/jid.2013.305.
J Dermatol
巻: 40 ページ: 249-58
10.1111/1346-8138.12076.
Exp Dermatol
巻: 22 ページ: 30-5
10.1111/exd.12047.
巻: 22 ページ: 606-8
10.1111/exd.12208.
Invest Ophthalmol Vis Sci
巻: 54 ページ: 3780-9.
10.1167/iovs.12-11077.