研究課題/領域番号 |
23591599
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
高橋 幸博 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60142379)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トロンボモジュリン / 仮死モデル / ラット / 脳保護 / DIC |
研究概要 |
新生児仮死は、今日の進歩した新生児医療の中でも、極めて予後不良な疾患で、重度の精神・運動障害をきたす最も重要な疾患である。本疾患の治療に脳低温療法が導入されたが、その予後は決して満足されるものではない。本疾患は播腫性血管内凝固(DIC)を容易に合併する。本研究では、このDICの治療薬として開発された可溶性トロンボモジュリン(リコモジュリン)を本疾患のDIC発症時に使用し、DICの効果に加え、神経学的予後改善がみられる事を観察した。平成23年度は、同臨床結果を止血・凝血学的に明らかにし、合わせて。神経学的予後改善効果を調査し、現在、その成果を投稿中である。また、平成24年度には同治療薬を含めあらゆる治療(脳低温療法を含む)を行っても予後不良な時との相違を明らかにする。一方、臨床研究では、同薬剤の詳細な機序を含めた効果を検証することが出来ないことから、日齢7の幼若仮死ラットを用い、リコモジュリンの中枢神経保護作用を実証することとした。平成23年度は、幼若ラットの総頸動脈結紮擦後の予後と、結紮後の幼若ラットを母獣ラットが授乳養育できるかを検証した。その結果、総頸動脈結紮後の幼若ラットの全ての飼育に成功した。また、単純に総頸動脈結紮のみではヒトモデルとは異なることから、低酸素装置を作成(既に完成)し、現在、総頸動脈結紮後低酸素負荷ラットの研究を開始し、平成24年度に実験モデルを完成させる。リコモジュリンは、同開発製薬の旭化成から無償供与の手続きを済ませ、薬剤実験の体制は整っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Day7での幼若ラットを母ラットから切り離し、左内頸動脈結紮後、再び母ラットと飼育し、Day20まで飼育できる体制ができ、同幼若ラットの発育、脳組織観察が可能となった。(2)同幼若ラットに8%酸素濃度(8%酸素、92%窒素)で30分処置しても幼若ラットの生存を確認できた。(3)左内頸動脈結紮後、8%酸素濃度(8%酸素、92%窒素)で30分処置後に母親ラットとの飼育は現在順調に育っている。したがって、平成23年度計画の虚血・低酸素幼若ラットモデルの作成は順調に進んでいる。現在、さらに、低酸素時聞は、臨床評価、検査所見で決定する。トロンボモジュリンは旭化成から高濃度の薬剤提供(無償)で得ることができた。現在投与法と投与量、ならびに脳組織移行について検討している。今年度は、通常の脳病理組織評価は、HE染色およびCaspase-3免疫染色のほか、トロンボモジュリン、von Willebrand factor,T issue factorに対する抗体を用いて免疫染色を行う予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に確立した仮死ラットモデルのDay20での評価は5月中旬に行う。また、低酸素時間については、実際の新生児の治療開始時期も考慮し、継続実験を追加する。新規幼若ラットを用いて、可溶性トロンボモジュリンの投与量は、DIC治療に対して1-3mg/kg程度必要との成績があることから、腹腔内に、0.1mg/kg、lmg/kg、3mg/kg(予定)で投与し、対照は生理食塩水を用いる。しかし、投与量は今年度さらに検討を予定している。測定項目としては臨床症状、凝固・線溶系因子測定、HMGB-lの測定、脳病理検査を測定する。同時に、Day 20の幼若ラットの発育評価(麻痺の程度)、脳組織解析を免疫組織染色を含め検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度からの計画である幼若ラットの総頸動脈結紮可否の検討を行うための低酸素虚血性脳症幼若ラットを用いた薬理試験を行うために使用する。妊娠母ラットを購入後、飼育出産させ、Day7で実験を開始し、予後を評価するためDay20まで飼育する必要があり、その飼育等の費用と、同研究での薬剤費用、脳組織染色での免疫染色試薬等の費用にあてる。
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