研究課題/領域番号 |
23591602
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
松岡 隆 昭和大学, 医学部, 講師 (20349111)
|
研究分担者 |
関沢 明彦 昭和大学, 医学部, 教授 (10245839)
四元 淳子 昭和大学, 医学部, 特別研究生 (30553648)
|
キーワード | 出生前診断 / 無侵襲 / 有核赤血球 / 遺伝カウンセリング |
研究概要 |
母体血中より有核赤血球を回収する工程は、①比重遠沈法、②有核赤血球の濃縮、③塗抹標本作成と自動分析装置での有核赤血球同定、④遺伝子解析からなる。①については、Percollの細胞障害性を確認し、Ficoll液の使用に切り替えた。②の有核赤血球の濃縮については、レクチン法による赤血球除去効率が不良で、以前の有核赤血球回収率が確保できないため、CD45を用いた磁気ビーズ法の検討を行い、レクチン法と同様の回収効率が確認された。また、自動有核赤血球識別装置は順調に稼働しており、予定通りのパフォーマンスを実現していることを確認した。④の遺伝子解析は、FISH法で胎児の性別および21番と18番染色体の数的異常のみを検討している。自動有核赤血球識別装置を用いることで、有核赤血球の回収数は飛躍的に向上し、14mLの血液から100細胞以上回収される状況にある。そうするとその全細胞のFISH診断を行うと非特異的なシグナルが多く検出され、診断を決定しきれない状況が発生している。そのような状況の打開策として、シグナル洗浄後に別の蛍光色をっ用いたFISHを再度行うなどの検討を行っているが、効率面での課題もあり、血球の由来同定も含めた、SNP解析の基礎検討を行っている。 さらに、非侵襲的出生前遺伝子診断法が、臨床応用される場合に、倫理的な問題点が指摘される可能性がある。その問題点として臨床遺伝の専門家がどのようなことを考えているかを解明する目的で、継続的にアンケート調査を行っている。妊婦は非侵襲的な検査の臨床応用を歓迎する一方、医療者からは懸念が示された。妊婦は検査の安全性を重要視したのに対し、医療者は、検査の信頼性や遺伝カウンセリングが徹底されることを検査施行の条件として考えていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
母体血中に存在する有核赤血球数がごく僅かであるが、それを安定的に母体血中から回収することは可能になった。その意味で計画は順調に達成している。
|
今後の研究の推進方策 |
母体血中に存在する有核赤血球数がごく僅かであり、それを安定的に母体血中から回収することは可能になった。ただ、多くの細胞が回収できるため、そのすべての解析は非効率であり、分析の効率を考慮した最適化の検討を行っている。臨床研究を開始する全段階であるが、上記解決後にprospectiveな検討で、検査精度を明らかにしたい。 また、非侵襲的な出生前診断の臨床実施における遺伝カウンセリングの重要性についてアンケート調査などを行いその重要性を実際に証明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
解析方法の最適化終了後にprospectiveな臨床研究を行い、無侵襲的な出生前検査の精度を明らかにしていきたい。この検討では、約100例を目標に臨床的な検討を行う。さらに、非侵襲的な出生前診断の臨床実施に向けて遺伝カウンセリングの質などを向上させるためのアンケート調査を行う。これらの成果は、世界出生前診断会議などで発表を予定している。
|