研究概要 |
本研究は研究代表者が行ってきた研究のひとつで、細胞内外のCa2+調節に重要な役割を演じているNa/Ca交換輸送電流が発達に伴い大きく変化することに着目し、成熟児と未熟児で収縮度が異なる血管組織である動脈管の収縮機転おいてNa/Ca交換輸送体がどのような役割を演じているのか研究するものである。平成23年度には主として分子生物学的研究を、平成24,25年度には免疫染色ならびに電気生理学的研究を行った。研究成果:Na+/Ca2+交換輸送体(Solute carrier family 8 (Slc8A), member 1, 2, 3)mRNA発現量の発達に伴う変化につき検討した。Sla8A1及び8A3は成獣の心臓で最も高発現しており、Slc8A2はまったくBGレベルであった。胎仔及び新生仔の動脈管・肺動脈・大動脈では、全般にSlc8A1が8A2や8A3より高発現であった。以上より、胎仔や新生仔の動脈管・肺動脈・大動脈においては、Slc8A1がSlc8A2やSlc8A3に比べて高発現であり、加えて動脈管においてはさらに高発現であることから、Na+/Ca2+交換輸送体Slc8A1が胎仔・新生仔の動脈管の血管緊張に関与している可能性が示された。動脈管組織の免疫蛍光染色で最も良く染まったのはSLC8aA3で、SLC8A1が続いた。SLC8A2はほとんど染まらなかった。パッチクランプ法では、クローニングしたSlc8A1とGFPを共発現させたHEK293細胞からNa+/Ca2+交換輸送電流を測定することができた。今後の課題:動脈管の特異的機序である酸素による収縮機転にNa/Ca交換輸送体がどのように関与しているかさらに検討を加えていく。
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