研究課題/領域番号 |
23591612
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
真鍋 求 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30138309)
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研究分担者 |
河村 七美 秋田大学, 医学部, 助教 (70323152)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | メラノーマ / Stat3 |
研究概要 |
我々は本研究課題において、PI3K経路の下流分子であるSTAT3に着目して、メラノサイト幹細胞の未分化性維持機構とその破綻による腫瘍発生の分子基盤を解明する。この課題を達成するため、まずTyrosinase-CreマウスとPten-flox/floxマウス、あるいはStat3-flox/floxマウスを交配し、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウス、Stat3ホモ欠失マウス、Ptenホモ欠失かつStat3ホモ欠失マウスなど作成することを試みた。 その結果、メラノサイト特異的Stat3ホモ欠失マウスは野生型と同様の表現型のまま、成体に至るまで生存が可能であった。そのため、実験を開始するのに、十分な個体数を確保するに至った。 しかし、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスは、交配を繰り返したにもかかわらず、出生率が低く、生存しても成体にいたるまでに死亡した。そのため、実験に必要な個体数を得ることができなかった。 そこで、Ptenホモ欠失マウスを作成することを断念し、Ptenヘテロ欠失マウスを用いて、今後の研究を遂行することとした。 まず、メラノサイト幹細胞の生存維持におけるPTENとSTAT3の関与を解析するため、メラノサイト特異的Stat3ホモ欠失マウスと野生型マウスに放射線を3Gy照射したところ、照射4週後には両者とも同様の表現型であったので 、現在も観察を継続している。 さらに、Stat3のホモ欠失による白髪化の自然発生が、Ptenのヘテロ欠失により回復するかを検討するため、Ptenヘテロ欠失マウス、Stat3ホモ欠失マウス、Ptenヘテロ欠失かつStat3ホモ欠失マウス、野生型マウスにおける白髪化の自然発生率を経時的に長期解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究では、色素細胞特異的プロモーターとしてDctを使用していたが、今回はより特異性が高く、効率の良いTyrosinaseプロモーターを用いた。しかし、Tyrosinase-CreマウスとPten-flox/floxマウスを交配し、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスを作成したところ、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスは出生率が低く、生存しても成体にいたるまでに死亡した。この所見は予想外の結果であったため、多くの時間をかけて交配を繰り返してみたが、同様の結果であった。 この理由を考察すると、Tyrosinaseが中枢神経でも発現することと関連があるものと思われる。すなわち、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスでは、中枢神経でもPtenが欠失しており、そのため脳の肥大と脳浮腫による水痘症が発症しているのであろう。この所見はDctプロモーターを使用した際にも起こったことであるが、Tyrosinaseプロモーターを使用すると、より高度の異常が生じた可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
Ptenホモ欠失マウスを作成することを断念し、Ptenヘテロ欠失マウスにより、今後の研究を遂行することとした。 まず、メラノサイト幹細胞の生存維持におけるPTENとSTAT3の関与を解析するため、メラノサイト特異的Ptenヘテロ欠失マウス、Stat3ホモ欠失マウス、Ptenヘテロ欠失かつStat3ホモ欠失マウス、野生型マウスなどを用いて、3Gyないし5Gyの放射線を照射後におけるメラノサイト幹細胞の形態学的変化やメラニン合成などを比較する。 また、各々のマウスより採取した培養メラノサイトにおけるトリチウムチミジンの取り込みや放射線照射後に生存している細胞数を比較する。 さらに、Ptenホモ欠失のため想定されるPI3K/AKT経路のシグナル伝達分子の発現と活性化が、Stat3のホモ欠失により回復するかを検討するため、これらのシグナル伝達分子の動態を免疫ブロットにより解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はマウスの交配に時間がかかり、十分な準備実験を行えなかったため、757,311円を次年度の使用額として繰り越した。 本年度は、マウスの飼育費に加えて、免疫染色や免疫ブロットをはじめとする細胞生物学的実験に研究費を使用していく予定である。
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