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2012 年度 実施状況報告書

メラノサイト幹細胞の未分化性維持機構とその破綻による腫瘍発生の分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 23591612
研究機関秋田大学

研究代表者

真鍋 求  秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30138309)

研究分担者 河村 七美  聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (70323152)
キーワードPI3K / STAT3 / 遺伝子改変マウス / 3次元培養法
研究概要

我々は本研究課題において、PI3K経路の下流分子であるSTAT3に着目して、メラノサイト幹細胞の未分化性維持機構とその破綻による腫瘍発生の分子基盤を解明する。この課題を達成するため、まずTyrosinase-CreマウスとPten-flox/floxマウス作成することを試みた。しかし、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスは、交配を繰り返したにもかかわらず、出生率が低く、生存しても成体にいたるまでに死亡した。そのため、実験に必要な個体数を得ることができなかった。そこで、Ptenホモ欠失マウスを作成することを断念し、Ptenヘテロ欠失マウスを用いて、今後の研究を遂行することとした。メラノサイト幹細胞の生存維持におけるPTENとSTAT3の関与を解析するため、Ptenヘテロ欠失マウス、Stat3ホモ欠失マウス、Ptenヘテロ欠失かつStat3ホモ欠失マウス、野生型マウスにおける白髪化の自然発生率を経時的に長期解析している。
さらに、PI3K経路とSTAT3経路の腫瘍発生における動的役割を解明するため、マウスB16-BL6メラノーマ細胞株を使用して準備実験を実施した。まず、細胞をspheroid状に増殖させる3次元培養法を確立し、通常の2次元培養した場合と比較した。その結果、spheroidは(1)コロニー形成能、self-renewal能、抗癌剤耐性能などが高いこと、さらに(2)slow-cycling細胞を多く含み、このslow-cycling細胞は抗癌剤処理に抵抗性を示すこと、などの興味深い知見が得られ、癌幹細胞を標的とする新規分子の選択に役立つものと期待される。現在、luciferaseを発現するstable transformantを作成中であり、spheroidの多臓器への転移能を検索する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでの研究では、色素細胞特異的プロモーターとしてDctを使用していたが、今回はより特異性が高く、効率の良いTyrosinaseプロモーターを用いた。しかし、Tyrosinase-CreマウスとPten-flox/floxマウスを交配し, メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスを作成したところ、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスは出生率が低く、生存しても成体にいたるまでに死亡した。この所見は予想外の結果であったため、多くの時間をかけて交配を繰り返してみたが、同様の結果であった。
この理由を考察すると、Tyrosinaseが中枢神経でも発現することと関連があるものと思われる。すなわち、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスでは、中枢神経でもPtenが欠失しており、そのため脳の肥大と脳浮腫による水痘症が発症しているのであろう。この所見はDctプロモーターを使用した際にも起こったことであるが、Tyrosinaseプロモーターを使用すると、より高度の異常が生じた可能性がある。
そこで、以下に述べるPtenヘテロ欠失マウスとメラノーマ細胞株を用いて、3次元培養法による準備実験を推進している。

今後の研究の推進方策

Ptenホモ欠失マウスを作成することを断念し、Ptenヘテロ欠失マウスにより、今後の研究を遂行することとした。具体的には、メラノサイト幹細胞の生存維持におけるPTENとSTAT3の関与を解析するため、Ptenヘテロ欠失マウス、Stat3ホモ欠失マウス、Ptenヘテロ欠失かつStat3ホモ欠失マウス、野生型マウスにおける白髪化の自然発生率を経時的に長期解析している。
さらに、PI3K経路とSTAT3経路の腫瘍発生における動的役割を解明するため、細胞をspheroid状に増殖させる3次元培養法を確立し、通常の2次元培養した場合と生物学的性状を比較している。その結果、spheroidは(1)コロニー形成能、self-renewal能、抗癌剤耐性能などが高いこと、さらに(2)slow-cycling細胞を多く含み、このslow-cycling細胞は抗癌剤処理に抵抗性を示すこと、などの興味深い知見が得られているが、今後はluciferaseを発現するstable transformantを作成し、spheroidの多臓器への転移能を検索する予定である。
3次元培養法を用いて作成したspheroidは、癌幹細胞の形質を有する細胞群を大量に含有するものを推察されるので、癌幹細胞に対する抗癌剤・分子標的治療剤の効果を判定するのに極めて有用な方法と言えよう。これらの細胞株を用いた実験系と遺伝子改変マウスを用いた実験系を組み合わせることにより、STAT3経路の遮断を基盤とする新規分子標的治療法が確立できるものと確信している。

次年度の研究費の使用計画

研究費は主にマウスの飼育費として使用したため、170円を次年度の使用額として繰り越した。
本年度は、マウスの飼育費に加えて、免疫染色や免疫ブロットをはじめとする細胞生物学的実験に研究費を使用していく予定である。

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公開日: 2014-07-24  

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