研究課題/領域番号 |
23591613
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
柴垣 直孝 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (40262662)
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研究分担者 |
猪爪 隆史 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (80334853)
花輪 書絵 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (80535592)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 / 悪性黒色腫 / ワクチン |
研究概要 |
B16メラノーマ細胞の培養液中には、IL-6, IL-10が含まれており、この培養液とT細胞を共培養すると、全てのT細胞のpSTAT3の発現が誘導された。また、この培養液にIL-6, IL-10の中和抗体を添加すると、T細胞のpSTAT3の発現は完全に阻害されたことより、B16由来のIL-6, IL-10が癌微小環境の免疫細胞に強く影響することが示唆された。 STAT3 inhibitor であるrR9-GRIM19融合タンパクを、in vivoでB16 メラノーマの腫瘍塊に直接接種した場合と、各種癌ワクチンと併用した場合の抗腫瘍効果を比較した。1. Trp2-peptide-DCワクチン群と併用した場合;rR9-GRIM19併用による抗腫瘍増強効果は全く認められなかった。2. R9-PTD含有腫瘍関連抗原融合タンパク(rR9-FcRL)-DCワクチン群と併用した場合;rR9-GRIM19併用による抗腫瘍増強効果は全く認められなかった。3. R9-PTD含有OVA融合タンパク(rR9-OVA)直接接種群と併用した場合;rR9-GRIM19併用による抗腫瘍増強効果を有意差をもって認めた。4. CpGアジュバンド接種群と併用した場合;rR9-GRIM19併用による抗腫瘍増強効果を有意差をもって認めた。5. 3+4を組み合わせた群(rR9-OVA+CpG);rR9-GRIM19併用によりB16 腫瘍塊の完全拒絶を認め、B16再接種でも完全拒絶を認めた。 また、各治療群の所属リンパ節のT細胞を詳しく解析した結果では、CD4+, CD8+T細胞のpSTAT3発現は完全に阻害されていること、またrR9-OVA+CpG+rR9-GRIM19治療群においてTrp2-epitope-speficit CD8+T細胞のexpansionとIFN-γ産生を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メラノーマに対する癌免疫療法の増強効果は、腫瘍関連抗原を使用する既存の免疫療法の組み合わせでは認められないこと、癌局所で活性化しているSTAT3を抑制することが最低条件であることが確認された。これらの知見は新しい発見といえる。また、in vivo投与におけるこれらの治療による重大な副作用は認められず、治療マウスは現在も無事に生存しており、臨床応用が可能な治療法であることが再認識できた。即ち、初年度の研究目標はおおむね達成されたといってよい。これらの結果は、担癌状態の癌免疫療法における必要条件を示しており、来年度への研究推進に大きく寄与するものであった。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究成果をふまえ、B16メラノーマ完全拒絶を誘導させたCpG+rR9-OVA+rR9-GRIM19による治療群の抗腫瘍効果の詳細な機序を検討する。即ち、腫瘍局所、所属リンパ節における免疫担当細胞の変化、特にphenotypeを、cytokine profileをもって比較検討する。特に、CD4+ T cell subset である IL-6, IL-17, IL-17, IFN-gamma産生の有無を検討すると共に、B16細胞株に対するCTL activity, 腫瘍局所へのCD8+T細胞の浸潤の程度について検討を行う。我々は強力な抗腫瘍効果を認める組み合わせとして、IL-12とSTAT3 inhibitorを腫瘍局所に投与することが最低条件であると考えている。そこで、腫瘍局所でのcytokine, 特にIL-12, IFN-gammaの産生量を測定し、B16腫瘍塊の完全拒絶の最低必須条件の組み合わせを検討するための基礎データとする。その後、IL-12 cDNAを安定導入させた細胞株をB16腫瘍塊近傍に接種し、rR9-GRIM19接種と組み合わせた場合の完全拒絶の再現を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費用は、マウス購入、各種試薬の購入として使用する予定である。尚、繰り越し金が生じた状況としては、本年度の研究が予想より低予算で済んだこと、また次年度に比較的高額な試薬を購入する予定であるためである。
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