研究課題/領域番号 |
23591613
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
柴垣 直孝 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (40262662)
|
研究分担者 |
猪爪 隆史 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (80334853)
花輪 書絵 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (80535592)
|
キーワード | メラノーマ / がん免疫 |
研究概要 |
昨年度我々は、B16メラノーマ担癌マウスに対し、腫瘍塊完全拒絶と特異的免疫反応誘導及びメモリー効果誘導達成の目的で、様々なワクチン療法の組み合わせを試行した。その結果、CpG (Th1誘導アジュバンド)、rR9-OVA (OVA特異的CTL+Th1を誘導する融合タンパク)、rR9-GRIM19 (新規STAT3分子標的薬)3者 (略してCOG therapy) のB16腫瘍塊内接種の場合のみに、完全拒絶と免疫的メモリー効果が誘導された。今回は、この強力な抗腫瘍効果を免疫学的見地より検討し、以下の事を明らかにした。 1. B16メラノーマ細胞株はIL-6/ IL-10を産生する。2. B16 培養液とナイーブ マウス由来CD4+/ CD8+ T細胞とを共培養すると、IFN-gamma産生能が完全に抑制され、IL-6/ IL-10産生phenotypeが誘導される。この際、全てのCD4+/ CD8+ T細胞のSTAT3は活性化される(リン酸化;pSTAT3の発現誘導)。3. In vitroにてこのT細胞のpSTAT3の発現は、rR9-GRIM19又はrIL-12添加のみで抑制される。4. In vivoにおいてB16担癌マウスの腫瘍所属リンパ節 (DLN)由来全CD4+/ CD8+ T細胞のpSTAT3は発現される。また、このT細胞はIL-6/ IL-10産生phenotypeである。このT細胞のpSTAT3の発現はCOG therapyの治療でのみ完全抑制される。5. COG therapyを施行したB16担癌(拒絶)マウスのDLN由来T細胞は、IL6/ IL-10産生の完全抑制と、IL-17/ IFN-gamma産生を認める。 これらの結果は、メラノーマ担癌宿主に癌免疫療法を行う際には、STAT3阻害薬の使用が最低必須条件であることを示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づいた達成度は、ほぼ順調に遂行されていると思われる。 すなわち、B16担癌マウスの免疫抑制を規定している機序が明らかになったこと、またそれを是正する新規STAT3阻害薬が in vivoにおいて有効であったことをほぼ解明したこと、現在これらの結果をまとめて2つの論文を作成し、投稿中であることであるためである。
|
今後の研究の推進方策 |
メラノーマに限らず、進行期の様々な癌細胞は恒常的にpSTAT3を発現し、その下流に存在するIL-6/ IL-10/ VEGF/ FGFの産生を制御する。最近になり、これらのSTAT3関連サイトカイン/増殖因子は、腫瘍微小環境の免疫修飾/抑制に関与することが明らかとなった。我々は、rR9-GRIM19単独接種による腫瘍塊完全拒絶の系として、B cell lymphoma 細胞株 (A20) の解析も同時に行っている。この強力な抗腫瘍効果を免疫学的見地より検討したところ、完全拒絶にいたる条件として、腫瘍微小環境内のSTAT3 関連サイトカイン (IL-10) の阻害と共に、proinflammatory サイトカインであるIL-1産生の亢進を認めること、またこの段階ではIFN-gammaの産生は少ないという結果を得ている。我々は現在、癌免疫誘導/増強のためのユビキタスな条件として、腫瘍微小環境内で適切に炎症反応を誘導させるSTAT3 阻害薬とIL-1誘導薬の組み合わせが最低条件ではないかと考えている。 次年度は、COG therapyを施行したB16 腫瘍塊におけるサイトカイン profileを解析し、IL-1の発現亢進が認められるかを検討し、in vivoにおけるrR9-GRIM19 とrIL-1同時投与による抗腫瘍効果を検討する。 また、当教室にストックしている様々なヒトメラノーマ癌細胞株のpSTAT3発現とIL-6/ IL-10産生能を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に消耗品に使用する。 現在、未使用金が32万円ある。これは希望している消耗品の在庫がなく、海外からの取り寄せになるため、時間がかかっていることによるが、平成25年5月中には納品予定である。
|